この本も、たまたま目にして手に取りました。
中田英寿さんとの対談も、興味深かったです。
P30
睡眠に関しては多くのアスリートが、何かしら課題を持っていると思う。試合前後はなかなか寝つけない。睡眠薬を使っている人も多い。もちろん睡眠は大事だから適度にしっかりとるほうがいいんだろうけど、コントロールできないものでもある。
コントロールできないのに、「昨日寝られなかった、ヤバい」とか「全然、寝つけないぞ、困った」みたいな感覚に陥りやすい。心の揺れ幅が大きい人の特徴だ。
だから僕はこう考えていた。
「よし、ちゃんと緊張してるじゃん」
寝られない、寝られなかった。試合に向けて準備できてるじゃん、と。
だから無理をして寝ようとか思わないし、そもそも寝なきゃいけない、とかこうしなきゃいけない、みたいなストレスを感じない方法をとるようにしていた。
それが心の揺れ幅を保つときに役立ったのは確かだ。
結局「こうしなきゃいけない」って決めすぎちゃうと、ブレたときの揺れ幅が大きくなってしまう。自分なりの保ち方を検証することが必要だと思う。
P61
とっつきにくいよりは、とっつきやすいほうがいい。
実際の僕は、とっつきにくい部分があるだろうし、僕自身、付き合いたくないなって思う人とはまったく付き合わない。
嫌なことは嫌、ってタイプだからね。
食後のコーヒーとか飲んでまで話をしてるのとか、好きじゃない。「お先でーす」って帰るタイプ。わがままだけど、注目してもらえる・一目置いてもらえると、許してもらえるようになる。
内田らしいなあ、って。
自分で言うのもなんなんだけど、ウチダメンタルはそうやって、ちょっと人とは違ったとしても、わがままだとしても、許してもらえるようになる。それだけでも、僕は良かったと思っています。
P104
内田 日本ではメンタルというと、ここ(胸のあたり)だと解釈されています。
中田 メンタルはここ(頭を指さす)だよね。頭が強くないと。身体ではなくて、頭を鍛えるために僕は現役を退いてからも身体のトレーニングを続けています。トレーニングをやっていて、極端な話、身体がポキッと折れることはない。追い込んでいくと頭が「きつい」「危ない」と指令を出して、身体を止めるから。だからトレーニングというのは頭を鍛えて意志の限界を引きのばしてあげることにあると思う。・・・でき上った身体は極端にいえば頭のトレーニングの副産物。きついトレーニングを継続することで、頭が鍛えられ、結果、仕事で疲れたと思うこともないし、きついなと感じることもないです。身体のトレーニングが精神的にも一番きついから。
・・・
・・・
中田 僕も次にやりたいことがあってやめたわけじゃなかった。子どものころから好きだったサッカーを続けてきた結果、いつの間にか29歳まで続けられた。だから、29歳までお金を稼ぐために仕事をするっていう感覚を抱いたこともなかった。
内田 はい、わかります。
中田 だから僕は、人生では仕事よりも「好きなことをやる」ことが重要だと定義したんです。それで好きなこと・やりたいことを見つけようと、世界中を旅した。実際に経験しなきゃわからないことがいっぱいあるだろうから。
・・・
引退から会社を立ち上げるまで9年かかった。サッカーも始めたのは8歳で、プロになったのが18歳。だから、基本的に好きなことを仕事にするには10年はかかると思っている。
内田 10年!
中田 その間はもがいて、考えて、いろんなことを経験していくことが必要だと思う。
・・・
・・・もちろん、働かなければいけないというマインドになるのはわかるけれど、そうだとしても、好きなことを見つけることを諦めてはいけない。世の中の風潮で決めない。こういうふうにするのが常道だ、という考えでは「自分の人生、なんなんだろう?」と思うときが来てしまう。
・・・
中田 自分の場合は、サッカーをやっている理由は、うまくなりたい、ということであって、優勝したいからやっているわけではなくて。
内田 優勝してもですか⁉
中田 うれしくないわけではないですけど。だってそうじゃなかったら優勝したら終わってしまう(笑)。だから今の仕事も生活もゴールはない。ゴールがないから好きなことじゃないと続かないんです。練習したり、人に話を聞きに行ったり、もがいている間が一番幸せだと思いますね。
・・・
・・・例えば僕は、どんな撮影もインタビューも、ミーティングすら、昼の12時から18時の間でしか一切やらない。そこに入らない仕事は、どんなに条件が良くてもやらない。それはなぜかというと、人間として当たり前のことなんだけれど、僕は自分の自由な時間のために生きているから。環境は自分で作らないとできないと思っている。仕事でも、同じ姿勢・同じ方向を向ける人ではないと一緒にできないし、だからこそ細部にも徹底的にこだわる。・・・これは、見せ方云々ではなくて、僕自身の生き方の話。自分がやりたいからやる。やらせられるのは絶対にだめ。サッカーでも、自分が好きなポジションで出られないのであれば、出なくてもいい、と思っていた。・・・
・・・
・・・お金のために自分の信念を曲げてまで生きたいわけではない。これが僕個人の生き方であり、自分の会社でいえば「会社の利益ではなく、世の中を変えられること」をやりたいと常に考えている。