虚心坦懐

ウチダメンタル 心の幹を太くする術 (幻冬舎単行本)

 さらっと読み進めつつ、ん?と印象に残ったところです。

 虚心坦懐っていい言葉だなと改めて思いました。

 

P188

 現役を引退して、サッカー選手時代には会えなかったような人と話や、仕事をさせてもらう機会が増えた。改めてわかったことがある。みんな頭がいいし、カッコいい。

 怒られるかもしれないけど、サッカー選手は全然、考えが足りないな、ってことを知った。

 なかでも、(明石家)さんまさんとまっちゃん(松本人志)は本当にすごかった。

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 さんまさんのカッコいいところは、やるだけやってぱっと帰っちゃうところ。

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「お願いします」って言いながら入ってきたと思ったらすぐに収録が始まって、終わったら「ありがとね」って帰っちゃう。マイクを外しながら。

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 まっちゃんはずっと会いたい人だった。ダウンタウンが大好きだったから。

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 なんかめちゃくちゃ頑張ってる感じがしないのに、一言、二言で爆笑を生んじゃうんだよね。やべえ、頭いいな、この人。やっぱりカッコいいなって。

 勝ち点3だけ取って、お疲れさん。

 サッカーでいえばそんな感じ。これって鹿島の雰囲気だったりする。

 こういう人たちって、きっと昔はとんがっていたんだろうけど、だんだん優しくなっていく。その優しさが一味、ふた味違うんだよね。

 

P194 

 ずっと財布に忍ばせていた言葉がある。

 それが「虚心坦懐」。

 書いたのは奥野遼右さんという、鹿島のコーチだった人。今はザスパクサツ群馬の監督をしている。・・・

 奥野さんは小さな紙にその言葉を書いて、裏側にするとその意味まで綴ってくれた。

「なんのわだかまりもない、素直な心で物事にのぞむこと」

 もらったのは南アフリカワールドカップに行く前、食事をしたあとのこと。何気なしに渡してくれた。めちゃくちゃいい言葉だな、って思った。

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 ドイツでも、日本代表でも、素直じゃない僕が何度も現れたと思う。

 でも、この言葉の意味がそのたびに僕を救ってくれたことも確かだ。試合に出られなくても、ケガで苦しい日々が訪れても「何も考えず、一生懸命に練習して、チームのために、自分のために頑張る」、そう理解して過ごした。

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 虚心坦懐。

 まだまだ足りない部分もあるけど、この言葉が実践できるようになる。

 それが、僕なりのカッコいい男、カッコいい生き方になる気がしている。

 

P267

 ・・・今の僕の課題なんだけど、そのなかで、変わらなきゃいけない人間関係というのは、書いてきたような「心を許せる相手」とだけ付き合っていけばいい、という考えを捨てなきゃいけないということ。

 現役のときのように、ピッチで結果を出せば、無理に付き合わなくてもいい、みたいなスタンスは通用しない。例えば、監督が心を許せる相手とだけ話す、なんてだめでしょ。

 むしろその気が合わない選手、自分の価値観とは違う選手、そういうメンバーをどう束ねて、どう勝たせていくのかを考えなきゃいけないわけだ。

 選手のときは、ある意味、自分だけのことを考えていれば解決できることが多かった。でも、これからは違う。多様な性格・考え・出自を受け入れ、そして大きくいえば、彼・彼女たちの人生をも背負う必要がある。

 その覚悟はあるか。

 これからの僕の課題だ。