草笛光子さん

いつも私で生きていく (小学館文庫 く 15-1)

 あさイチ中谷美紀さんが出演された時、草笛光子さんがコメントを寄せていらして、ステキな方だな~と改めて思い、本を読みました。

 

P10

 毎朝、ストレッチをする前に、一杯のジュースを飲みます。小松菜、セロリ、キャベツ、にんじん、りんご、レモン汁をジューサーにかけ、バナナ、すり胡麻、きな粉、飲むヨーグルトをミキサーで混ぜた〝健康ジュース〟。ちょっと複雑な味だけど、おいしいです。

 新聞のコラムを読んで、飲み始めたのはずいぶん前のことです。私は「これはいい!」と思うと続けるたちで、気がつくと、飲み続けて、何十年にもなってしまいました。

 目覚めてすぐ、このジュースをいただいて、ストレッチをしたあとに朝食です。朝食にはなるべく野菜を食べるようにしています。

 週1度のパーソナルトレーナーとのトレーニングのあとは、トレーナーと一緒に、たっぷり食べます。筋肉を使ったあとはタンパク質を摂ったほうがいいということなので、肉や卵をしっかり食べます。

 トレーニングをするときは、粉末のアミノ酸を水で溶いたものをボトルに入れておいて、まめに水分補給をします。タオルで汗をぬぐいつつ、ゴクゴクとアミノ酸飲料を飲み、トレーナーと「ここの筋肉が足りないわね。ここを強化するには……」などとやっているときは、自分が女優という気がしません。なにかの運動選手、まるでアスリートなのではという気さえしてきます。

 健康によい食生活というと、時間は規則正しく、摂取カロリーを考えながら、好き嫌いなく、いろいろなものから栄養を摂るというのが理想的なのでしょうが、私の場合は、食事の時間はまちまちですし、ウナギやレバーは苦手、魚の光りモノもダメ、と食べず嫌いも多いです。カロリー計算のような、手間のかかることもしません。

 舞台に出ていない時期、仕事でそれほど体を使わないときは、気持ちもゆるんでいますし、好きなものを好きなように食べます。

 トレーナーに言わせると、その時期は〝放牧〟なのだそうです。とはいえ、食べ過ぎることはないように、頭のすみっこで、なんとなく、気をつけているとは思いますが。  

 そして、舞台が決まれば、稽古を始めるスケジュールが決まり、そこから日程を逆算して、体を徐々に絞っていきます。

 このようなおおざっぱながらもメリハリのある管理で、これまでさいわいなことに「困った!急いでダイエットしなくちゃ」なんていう事態になったことはありません。

 実は体重計には何十年ものったことがありません。体重計はどこへ行ったやら……。

 動きが軽いか重いか、体を触ってみて、お肉がたるんでいるかひきしまっているか、自分の感覚が〝体重計〟です。

 実際、〝放牧〟の時期など、おなかのあたりを触ると、おや?と思う分量のお肉がついていることもあります。

 鏡に全身を映せば、鏡もウソはつきません。体重を測るまでもなく、「これはマズい。明日からもうちょっと気を入れてトレーニングしなくては」という気持ちになるというわけです。

 健康ジュースと同じくらい長いあいだ、朝の習慣として続けているのが、ベッドの上での柔軟体操〝背伸び体操〟。これは何十年も前、ご一緒に舞台の仕事をした前進座の三代目中村翫右衛門先生から教わったことです。

 朝、目覚めたら、仰向けの姿勢で背伸びをします。足の指先から脚全体、手の指から腕全体もぐーんと伸ばします。それから、はぁ~っと脱力します。少しずつ伸びを大きくしながら、何度か繰り返して、背中も腰も固まっていないことを感じとってから、身体を横向きにして、ゆっくりと起き上がります。この横向きの体勢が、腰に負担をかけずに起き上がるポイントのようです。

 25歳のときに、外科のお医者さんから「あなたの骨盤は少しずれているから、腰には気をつけなさい」と言われた私ですが、慢性的な腰痛にもギックリにもこれまで無縁でこられたのは、寝起きの背伸び体操を続けてきたからではないかと思います。