自由を求めて冒険へ!

自由を求めて冒険へ!: 動物たちとの4千キロ冒険記

 内田篤人さんのYouTube番組をたまたま見ていたら、著者が出演していて、これほどまでに自由な方がいるんだとびっくりして読んでみました。

 これは児童書だったので、自分が子どもの頃に読んでたらどう思ったかな・・・とも思いました。

 

P70

 モロッコでの冒険から2年。ぼくは、中国の上海から中国の北西端にあるウルムチへ向かう列車の中で体育座りをしていました。ここからウルムチまではまだまだ時間がかかりますが、座席がいっぱいだったので床に段ボールを敷いて座るしかありませんでした。

 さあ、いよいよ新しい冒険が始まります。期待に胸をふくらませながら、ぼくは列車の中で静かに体育座りを続けます。

 次の冒険の舞台は、中国の西にあるキルギスという草原の国です。冒険のきっかけは、「ゼルダの伝説」というゲームで主人公のリンクが愛馬のエポナに乗って草原を駆けめぐるのを見て、楽しそうだと思ったからでした。

 ・・・

 キルギスに到着後、ぼくはすぐに馬についての情報収集をはじめました。一緒に冒険できるような強い馬を、信頼できる人間から買わなければなりません。キルギスには、日本人の友達がいたので連絡を取り、馬を飼っている知り合いがいないかと相談したところ、キルギスの北東部にあるコチコルという町で暮らすクバンという男を紹介してもらいました。

 さっそくコチコルへ行き、クバンと会いました。クバンは背が高く、彫りの深いキルギス人で、奥さんや子ども3人と一緒にコチコルのはずれで暮らしていました。

「はじめまして!ぼくはGO。今は冒険をするために、馬を探しているんだ」

「GO、はじめまして。クバンだ。馬を売ってもいいけど、野宿で旅をするなんて、危ないんじゃないか?」

「いや、大丈夫だよ。ぼくは冒険家で、この前はモロッコでロバと一緒に1000キロメートル以上野宿旅をしたんだ」

 ぼくがそう言ってモロッコの写真や動画を見せると、クバンは驚き、「それなら大丈夫そうだな!」と納得してくれました。かくして、クバンの飼っていた、とても大きくて強く、たてがみの美しいオスの馬がぼくの相棒となりました。値段はおよそ13万円でした。・・・

 

P148

 ・・・ぼくはまた数日間、おじさんの家に居候して暮らすことになりました。そのころにはおじさんたち家族とはすっかり仲良くなっていたので、チョルポンおばさんは「私のことはお母さんだと思っていいからね!あなたは息子なんだから、いつまでもいていいわよ!」と何度も言ってくれました。チョルポンおばさんのその温かい言葉に感謝しつつ、ぼくはおじさん一家と楽しい時間を過ごしました。

 ぼくにとって、こんなに安心して過ごせる場所は本当に久しぶりでした。実はぼくは、親子関係がうまくいかなかったので高校の途中からは1人暮らしをしていました。これまでは安心して帰れるような家が世界のどこにもありませんでした。しかし、トロク村へはいつでも帰ってきてもいいようです。日本にある自分の両親の家ではなかなかうまくいかず暗い日々を送っていたぼくでしたが、外国に飛び出して、いろいろな世界を冒険した結果、ようやく自分の居場所を一つ見つけることができました。これはぼくにとってはとても価値のあることで、涙が出るほどうれしい出来事でした。

(……また必ず、トロク村に帰ってこよう。)

 トロク村での滞在最終日、ぼくはそう決心して村を出発し、次の冒険へ挑むべく、その準備のためにキルギスから日本へ向かう飛行機へと乗り込みました。

 

P196

 難しい冒険に挑戦して、失敗したり成功したりを繰り返すうちに、ぼくはどんどん自由になり、どんどん幸せになることができました。今、夢をかなえ、自由になったぼくの目の前には、真っ白な世界が広がっています。この真っ白な世界は、ぼくがこれから好きに色をつけて歩んでいくことのできる場所です。本当は、だれにとっても人生は自由で、好きなように生きていくことのできるものです。ぼくは冒険を乗り越えて自分に自信をつけていくことで、たくさん遠回りをしてからようやくそのことに気づけました。

 さあ、これからどう生きて、どんなRPGを楽しみましょうか。この真っ白な世界に、自分がすてきだと思う色を好きなようにめちゃくちゃに塗っていって、ぼくらしい色とりどりの最高の人生にしていこうと思います。