目の前の人を幸せにすること

ごちゃまぜで社会は変えられる: 地域づくりとビジネスの話

 ほんとに大切だなと、印象に残ったところです。

 

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 Part1の最後に、もう一つ、大切な話をします。何かを始めたいと思っている人、今を変えたいと思っている人には、ぜひ聴いてほしい話です。

 えんがおは僕が25歳の時に設立しました。当時は意外と怖さはなくて、なんかいける気がしたし、別に失敗しても死にはしない、と思っていました。何より、周りの大人に恵まれました。この人たちが周りにいてくれるなら大丈夫だろう。そんな感じでした。

 ただ、それなりに批判もありました。・・・ダイレクトに言われることは多くはなかったですが、そういう声は聞こえてきたり、察したりしますよね。

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 ・・・批判にも、正しいものもあったり、まったく根拠のないものもありました。時々、少しだけ傷ついたり心が折れそうになることもありました。そしていろいろ考えた結果、自分にできることは「目の前の人を幸せにすること」しかないと思ったんです。タスクフォーカスって言うらしいです。自分のやるべきことに集中する。批判は気にしない。

 とは言っても、批判的な声に左右されることもなかったわけではありません。あの人はああ言っているらしい、と気にして方向性を変えようとしたこともありました。でも、その時ついてきてくれる仲間たちも一緒に傷つき、悩んでいることに気がついたんです。

 そうなんです。リーダーが批判を気にしてブレてしまうと、ついていく仲間たちも一緒に気にするし、傷つくんですね。その時に、やめようと思いました。自分たちのやるべきことをやる。批判は気にしない。応援してくれる人だけを大切にする。結構振り切っているように聞こえるかもしれませんが、当時はそんなふうに割り切って進みました。結果、それが良かったように思います。

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 面白かったのは、その方向性で進んで、しばらく経った頃、少しだけ、僕らの活動で喜ぶ人がはっきりと見えてきて、クラウドファンディングで150人の支援者から135万円集められたり、「次世代の力大賞」という賞をもらえたりしたあたり。批判の声が、圧倒的に聞こえなくなりました。

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 良くも悪くも、社会は結果主義なのだと思います。結果を出してから、それまでの過程を語れる。他人に対しては結果を求めなくてもいいけど、何かを変えたければ、自分に対しては結果主義になること。その「結果」とは、・・・自分たちの活動で「誰が幸せになったのか」です。これにつきるんです。

 そこまで行けば大丈夫。たとえいろいろ言われても「でも、ここにいるおばあちゃんは喜んでる。とりあえずそれでいいや」と思える。

 ・・・批判を気にしすぎてしまうのは、自分の活動で喜ぶ人を、自分の中でまだ明確化できていないからです。遠くの誰かが批判したってしなくたって関係ないです。あなたの喜ばせたい人が喜んでいれば、それでいいんです。

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 それでも、結果を出す過程で批判され、苦しむこともあるかと思います。そんな時は、誰か同じような挑戦者に話すことをおすすめします。

 大丈夫です。「今を変えようとする人」は少なからずみんな、批判を受けた経験があります。同じ苦しみを通っています。そんな時は、ぐちりながらビールを飲んだっていいじゃないですか。必要なら僕に連絡ください。一緒に飲みましょう。

 

P112

 そうして生活支援事業・世代間交流を行っていくうちに、補助金の話をもらえたり、寄付の話が出てきたりしました。この辺はまさに、僕らの活動で喜ぶ人の顔が見え始めてきたことで出てきた効果であり、成果であると思います。そこからはただただ、その積み重ねと繰り返しでした。まとめます。

 

①目の前のニーズを拾う。それが自分たちのもつ性質と合っているかを確認して、できそうならやる。

②やる時はなるべく多くの人を巻き込む。つくる段階から巻き込む。

③壁にぶつかって凹む。ビールとレモンサワーを飲む。

④とにかく相談する。

⑤その活動で誰が喜ぶかを明確化して、発信する。

 

 ・・・もう、これですよ。これ以外ないと思います。僕が言いたいことなんて。・・・本当にただこの繰り返しでした。その結果が、地域食堂であり、シェアハウスであり、グループホームなんです。

 

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 なんでそんなにあっちこっち手を出すんだろう?って思いますよね。僕も思います。でも、「高齢者の孤立」に向き合い続けてわかったのは、高齢者の孤立は、高齢者とだけ向き合っていても解決できない、ということです。孤立の問題の根底には、たくさんの課題が詰まっています。その一つひとつと「ニーズ先行型」で向き合うと、自然といろいろなことへの対応が必要になってくるんです。なので、5年目からは法人のミッションを一つ加えました。

「人とのつながりの力で、あらゆる社会問題と向き合う」

 ぼくたち一般社団法人えんがおは、人とのつながりの力で、目の前にでてきた声一つひとつに向き合える組織を目指します。これは、言葉だけ聞くととても大変なことのように思えますが、たぶん大丈夫です。課題は多くても、それ以上に「集まる資源」が豊富になります。世代を超えたつながりには、そういう力があるんです。

 そうやって、できる範囲で少しだけ無茶をしながら、ごちゃまぜのまちづくりを進めていきます。

 子どもが自由に過ごす。保育士さんと、学生やおじいちゃんおばあちゃんがそれを見守る。お父さんお母さんは少しゆっくりお茶飲みして、悩みをおばあちゃんに聞いてもらうのもいいですね。シェアハウスの若者やグループホームの利用者さんがそこに遊びに来て、子どもと一緒に遊んだり、みんなで一緒にご飯を食べたりする。学校が合わなくたって、自分が好きになれなくたって、ごちゃまぜの関係の中で、「自分」を発揮できる。世代や障がいの有無にかかわらず、みんなが「日常的に」、自然に関わり合う空間です。

 どうです?ワクワクしました?

 しますよね。ワクワクする景色、見えますよね。そんな景色、実際に見てみたいですよね。僕もです。

 自分が見たい景色を見る方法は、二つあります。一つは自分でつくること。もう一つは、つくってる人を応援すること。どちらも「つくる」です。

 僕は、まだまだ心が弱くて、未熟で、失敗を重ねてばかりいます。せっかく集まってきてくれて、応援してくださっている方々にも、自分が思っているようには関われず、後悔や反省を繰り返しています。それでも、僕の周りの環境は、世界一である自信があります。一般社団法人えんがおは、始まった時からずっと、環境に恵まれています。自ら道を切り開いたというよりは、次から次へと必要なものが集まり、道が開かれていって、その道を歩かせてもらっているような感覚です。

 この道を歩かせてもらえる幸せを考えれば、これからくるであろう困難や逆風にも、臆せず立ち向かえます。失敗もまだまだするでしょうけど、その度に何かを学んで、みなさんに「助けて」とお願いしていきます。

 そうして、周りにいてくれる人たちと一緒に、一日一日を丁寧に生きていこうと思っています。