できない人が顕在化させてくれる

誰でもすぐに戦力になれる未来食堂で働きませんか ゆるいつながりで最強のチームをつくる

 小林せかいさんの本、こちらも読みました。

「使えない人間なんて、いるわけない」、「そんなふうには、私は絶対、思うもんか」、という著者の工夫や発見が書かれています。

 大事だなと思うことばかりでした。

 

P161

「できない人ほど気づきをくれる」とは、さんざん言われていることです。ですので、精神論を語っても皆さんも聞き飽きていると思いますので、ここでは具体的に〝できない人〟がどのような気づきをくれるか、という視点からお話しします。

色盲の人

 ある日のこと。サラダの盛り付けをAさんに頼んだのですが、どうも緑ピーマンと赤ピーマンの盛り付けにばらつきがあるます。・・・何度も手本を見せたり「緑と赤の比率が半々になるようにしてください」と言ってもダメでした。すると、・・・「実は私は軽い色盲で、赤と緑がよく分からないのです」と言うのです。・・・

 そこで、緑ピーマンと赤ピーマンを別々の容器に分けると、そこからは問題なく盛り付けができるようになりました。

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・金属の見分けが付かない人

「未来食堂で料理の修業がしたい」とやってきたまかないさんは、しかし自宅で料理をしたことがなく、アルミボウルとステンレスボウルの見分けが付きませんでした。柔らかい金属であるアルミは、金属たわしで洗ってはいけないのですが、何度注意してもステンレスと同じように金属たわしで洗ってしまいます。

 そこで、金属たわしを廃止し、普通のたわしを導入しました。普通のたわしは金属を痛めないので、アルミでも問題なく使うことが出来ます。・・・

 ここで注意して欲しいのは、できない人を本質的に〝できる人〟に変えているわけではない、ということです。色盲の人は色盲のままですし、金属を見分ける目も育っていません。

 ・・・これらの例のように「99%の人ができていること」ができない人は、私見ですが、その点においてスキルアップしたいとは別段思っていないことがほとんどです。(例えば私は、自宅の住所が覚えられなくてよく笑われるのですが、メモを見たら分かるし困ることもないので、恐らくこのまま生きていくと思います)。

 できない人を変えようと思うのではなく、〝できないままでも作業できるようにするにはどうすればいいか〟に視点を合わせることが大切です。

 できない人は〝何か〟の気づきを与えてくれます。その〝何か〟は、他の人にとっても役立つ仕組みに形を変え、チーム全体にその恩恵が還元されます。

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 つまり〝できる人〟も、できるとはいえ無意識のうちに、作業をこなすのに何らかのコストを負担しているのです。ほとんどの人は赤/緑の見分けはつきます。でも、そもそも見分ける必要なく作業できれば、ずっと楽です。

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 ・・・わずかながらも負担を感じる行為において、できない人がその負担を顕在化させます。それにより、「たしかにこれは負担だ」と気づくことができ、「そもそも負担をなくすためにはどうすればいいか」と工夫が生まれるのです。

「できない人ほど気づきをくれる」。これは、普段顕在化していない作業負担が浮き彫りにされるという意味で真実であり、決して精神論ではありません。できない人を切り捨てていては、使いやすい仕組みはいつまで経っても生まれません。