だいぶ前に、前身となる本を読みましたが、こちらは仕立て直された完全版です。
脳って、いろんなクセがあるのだなぁと・・・
P28
目の前に異性の写真が2枚あります。「どちらが好みのタイプですか。好きなほうの写真をさしあげますよ」。あなたは、好みのほうを指しました。
実は相手は手品師で、こっそりと、あなたが選んだほうとは逆の、つまり好みではないほうの写真を手渡します。
さて、あなたは手元にきた写真を眺めて、「好みでなかった異性の写真が手渡された」ことに気づくでしょうか。
① 気づく
② 気づかない
答え ②気づかない
見知らぬ女性から道を訊かれました。地図を眺めながら相手の目的地を探しているあいだに、この女性が別の女性に入れ替わります。そうとは知らないあなたは、道順を教えようと顔をあげます。さて、女性が入れ替わっていることに気づくでしょうか。
なんと9割以上の人が気づきません。変化に気づかないこの脳のクセは「変化盲」と呼ばれます。設問の状況でも、なんと8割以上の人が写真の入れ替わりに気づきません。ただし、このケースでは、自分で選んだのに気づかないのですから、「変化盲」ではなく、「選択盲」と呼ばれます。
実は、選択盲の実験は、この先が奥深いのです。「なぜその人がタイプなのですか?」と理由を訊ねると、しばしば、手元にある(つまり好みでなかったほうの)写真を眺めながら、「丸顔で優しそうだから」「目尻に知性を感じるから」などと、そこに写った人(つまり好みでなかったほう)の特徴を挙げながら、好きな理由として答えます。
脳は理由を問われると作話します。しかも、でっちあげたその理由を、本人は心底から「本当の理由」だと勘違いしています。
誰しも思い当たることがあるでしょう。「なぜその食べ物が好きなの?」「なぜその職業に就いたの?」「なぜこの人と結婚したの?」「なぜこの曲が好きなの?」。そんな質問を受けたとき、口から出てきた「理由」の大半は作話です。
真の理由は自分ではアクセスできない無意識の世界に格納されています。自分の与り知らないところに理由があるのに、恥じらいもなく堂々と虚構を語ります。ヒトは自身の虚言癖に気づいていない気の毒な存在。愛嬌たっぷりです。
P96
突然に雨が降り出しました。
職場の傘立てを見たら、なんと、いつもの私のビニール傘がありません。
このとき、どちらの推測をする人が多いでしょうか。
①誰かが持って行ったかな
②どこかに置き忘れたかな
答え ①誰かが持って行ったかな
責任は自分でなく、他人にあると考えたほうがストレスが少なくてすみます。置き忘れたと感じるより先に、盗まれたと直感する人が多いはずです。
脳は、成功を「自分の手柄だ」と思い、失敗を「他人のせいだ」「不可抗力だった」と解釈します、次の例を見れば、思い当たるでしょう。
―人がやらないのは怠慢だから
自分がやらないのは忙しいから
―人が出世したのは運がよかったから
自分が出世したのは頑張ったから
―人が時間をかけるのは要領が悪いから
自分が時間をかけるのは丹念だから
―人が上司に受けがいいのはおべっか使いだから
自分が上司に受けがいいのは協力的だから
―人が仕事ができないのは才能がないから
自分が仕事ができないのは上司がアホだから
―人がテストに失敗したのは努力不足だから
自分がテストに失敗したのは問題が難しかったから
―人が言われていないことをやるのはでしゃばりだから
自分が言われていないことをやるのは積極的だから
脳は自尊心を保つために、知らぬ間に心地よい理由を創作します。
―この本が不評だったら世間の理解力がないから
好評だったら著者のセンスがいいから
(すみません、ホントは出版社や書店のおかげです)