ネコや鳥は違うというのも、おもしろいなぁと思いました。
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ネズミを飼育するときに、通常は、餌は皿に入れられていて、好きなときに食べられる状態にしています。しかし、レバーを押すと餌が出てくる仕掛けに変えても、すぐに学習し、上手にレバーを押して、餌を食べるようになります。
そこで、2種の餌を同時に与えてみましょう。一つは皿に入った餌、もう一つはレバーを押して出る餌。どちらの餌も同じです。
さて、どちらの餌を選ぶネズミが多いでしょうか。
① 皿に入った餌
② レバーを押して出る餌
答え ②レバーを押して出る餌
不思議なことに、皿から餌を自由に食べられるにもかかわらず、わざわざレバーを押します。苦労せずに得られる皿の餌よりも、労働をして得る餌のほうが、価値が高いのでしょう。
実は、これはイヌやサルはもちろん、トリやサカナに至るまで、動物界にほぼ共通して見られる現象で、「コントラフリーローディング効果」と呼ばれます。
ヒトも例外ではありません。同様の実験を、就学前の幼児に対して行うと、ほぼ100%の確率でレバーを押します。成長とともにレバーを押す確率は減りますが、大学生でも選択率は五分五分で、完全に利益だけを追求することはありません。
こうした脳のクセは「労働の価値」に結びつきます。贅沢三昧で悠々自適な生活は、誰もが憧れます。しかし、仮にそんな夢のような生活が手に入ったとして、本当に幸せでしょうか。
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ちなみに、これまで調べられた中で、コントラフリーローディング効果が生じない唯一の動物が飼いネコです。ネコは徹底的な現実主義で、レバー押しに精を出すことはありません。
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三つの箱があります。どれか一つには景品が入っています。あなたは答えを知りませんが、出題者はどの箱が「当たり」かを知っています。
そこで、あなたは「当たり」だと思う箱を一つ選びました。
すると出題者は、あなたが選ばなかった二つの箱から「はずれ」の箱を一つを開けて示してくれました。そして、あなたに「もう一度、箱を選びなおしてよい」と言います。
この場合、どちらを選択する人が多いでしょうか。
① 最初に選んだ箱を変えない
② 出題者が開かなかったもう一方の箱を選びなおす
答え ①最初に選んだ箱を変えない(正しい行動は②)
これは「モンティ・ホール問題」と呼ばれるクイズです。選択肢①を選ぶ人が多いのですが、確率的に正しい選択は②です。最初に選んだ箱を捨て、別の箱に変えたほうが、当たりクジを引く確率は上がります。最初に選んだ箱が正解である確率は3分の1ですが、「はずれ」が一つ分かった後では、残りの箱が正解である確率は2分の1になるからです。
イメージのわかない人は、箱が100個あった場合を想像してみましょう。100個から1個を選んだ時点では正解は100分の1です。しかし出題者が残り99個のうち、98個の「はずれ箱」を開示してくれたらどうでしょう。残った1個が「当たり」である可能性が高いと直感できるでしょう。
にもかかわらず、モンティ・ホール問題では、85%もの人が箱を変えないのです。
脳は、たとえ偶然に左右されることであっても、自分の能力や意思で「何とかできる」と妄想します。だから、自分の意思で選んだ箱のほうが「当たりそう」だと感じるのです。
宝くじも同様です。他人に買ってもらうのではなく、自分自身で窓口に出向いて買いたい人が多いでしょう。サイコロで大きな数字を出したいときは、力強く投げることが知られています。・・・
ちなみに、鳥にモンティ・ホール問題を解かせると、正しい選択をすることが知られています。