判断せずに入力する

 

オードリー・タンの思考 IQよりも大切なこと

 心の声を出さず、判断せずに入力するということ、それが自然にできるって素晴らしすぎます。。。

 

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 ・・・では、オードリーにとって消費にはどのようなこだわりがあるのだろうか。

「消費についてのこだわりはありません。<ソーシャル・イノベーション・プラットフォーム>を見て何かを買ったり、髪を切る時には社会や環境に配慮した<好剪才 SuperbCut>という美容室に行くなど、社会に貢献しているものを優先して選ぶようにはしていますが、こだわりのレベルとは呼べないですから、こだわっていないのと同じことです」

 そう話すオードリーが当日着ていたのは、その日におろしたばかりの新しい服だった。明るい青と黒のコントラストが美しいその服は、台湾で開発され、コーヒーかすなど100%リサイクル素材から作られており、彼女の親戚がオードリーのためにデザイナーとして初めて作った一点ものだ。色も柄も、彼女にとても似合っていた。

 彼女は自分自身が一つのメディアであることをはっきり認識していて、貢献できることはしようという姿勢でいる。彼女の元へは日々、数々のメーカーや団体から推薦のメッセージを書いたり、動画を撮って欲しいといった依頼が届く。もちろん審査の類はしているだろうが、彼女はそれを厭わず、どんどん引き受けている。私は彼女が昼休みの数分の空き時間を利用して、そういった動画の撮影をする場面に立ち会ったこともある。「まさに公僕の公僕だ」と私は思った。

 だが、彼女は常に「for(~のために)」ではなく「with(~と共に)」というスタンスを取っており、特定の団体や組織のために動くことはない。だからこそ私は、彼女が「これは」と思ったものについて主体的に消費する時、そこには意味があるのだろうと受け取っている。

 

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 ・・・彼女のソーシャル・イノベーションのインスピレーションはどこから湧いてくるのだろう?

 オードリーの場合、その源は、散歩でも読書でもなく、睡眠だと言う。

「散歩や読書は生活リズムを維持するための習慣ですが、インスピレーションの源は睡眠です。やり方はとてもシンプルで、寝る前、解決したい問題に関連する資料を読み込みます。この時はただ頭に入れるだけで、何も考えずに、ただただページを素早くめくります。そのまま眠りにつくと、翌朝起きた時には答えが出ているのです」

 呆気に取られた私は「それは、あなたが天才だからでは?普通の人間には真似できない……」とまごついてしまったが、彼女は大真面目だ。

「これは私だけに有効な方法ではなく、人間なら誰しもに備わった脳の働きです。私たちの脳は、眠っている時にその日経験したすべてのことから重要事項を導き出し、脳の中でそれらを何回も繰り返し映し出します。それが途中で中断されると夢を見ます。中断されなかった場合は自分が夢を見ていたことを覚えていないかもしれませんが、人は誰しも、こうして長期的な記憶を形成しています。記憶のポイントを描けなければ記憶は曖昧になりますが、描くことができれば、後に思い出したい時にすぐその記憶を呼び出すことができます。睡眠不足の学生が暗記に多くの時間を費やしても意味が無いのは、このためですね。

 これについて練習が必要であるとすれば、それらの資料を読み込んでいる間は、何も判断をしてはならないということです。読みながら感情を出してしまうと、続けて見た資料も、その感情に引きずられてしまいます。イノベーションには既存の考えとはまったく違う角度から物事を捉えることが必要ですし、それに最初の資料で結論が浮かんでしまうと、後に見る資料をあまりきちんと読み込まなくなってしまいますよね。ですから心の声を出さず、判断せずに読み終えることです。これは人の話を聴いている時も同じです」

 ・・・

「誰かから意見が出された時、考える余裕も無くすぐ判断してしまったら、それは私の考えではなく、相手の考えに反応しているだけなのです。一人一人の心では、受け止められる事柄も量も異なります。中国語の諺に『關心則亂』というものがあります。関心を持つと、その分、心が乱れるといった意味です。逆に、関心を持たなければ心が乱れることもありません。たくさんの意見が様々な方向から出た場合に特に言えることですが、大切なのは、心の中にゆとりを保てるスペースを持っておくことです」