流れに沿う

「違うこと」をしないこと (角川文庫)

 CHIEさんとばななさんのお話も、大事なことだな~と思いました。

 

P127

CHIE 人生を良くするには、そのために敢えて何かをやるってことよりも、流れに逆らわないことが大事だったりしますよね。

 

吉本 確かに。流れに逆らえば逆らうほど、困難が襲ってくるかもしれない。別にしなくていい苦労が多そうですよね。流れを読んで身をまかせることも大切。

 

CHIE それで思い出したんですけど、ばななさん、前に言ってましたよね。本当は行きたくないのに「約束したから」とか「この人には会わなきゃいけないし」とか、何かと理由をつけて行こうとしてる時って、言い訳が長くなる。そういう時は、流れに逆らってるんだって。

 

吉本 うん。そういう時って、だいたい行かない方がいい流れじゃない?たとえば登山なんかでも、急にあの人もこの人もって来られなくなって、代わりに誰か呼ばなくちゃいけないみたいな時は、やっぱり、登らない方が本当はいいんじゃないかって。流れに乗ってる時って、なんの準備もしていなかったのに、いつの間にか人が集まって、自然と行く流れになっていたりする。「気がついたら、そうなっていた」みたいなのが、本当の流れじゃないかって。

 

CHIE 無理しない。頑張らない。

 

吉本 自分の自然な流れに沿っていく。

 

CHIE 私はよく「力まないで」って言ってるんですよ。嫌なことややりたくないことが起きたとしても、何かやりたいことを見つけるために必要だったりするから、自分がやらなきゃ、一から全部、取捨選択して世界をつくらなきゃって力まない方がいい。力むと絶対うまくいかないんですよね。力まずに、ゆるーく脱力系で行きましょうって、脱力系スピリチュアルを推奨しています(笑)。

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 うまくいく時って、絶対、力が抜けてるんですよ。

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 お釈迦様はそういう状態を「無」と言われた。好きなことをやって、成功した人って「無我夢中だった」って言うじゃないですか。ただひたすらやっていたら、なんかわからないけど、すごくいい景色のところに出たみたいな。

 

吉本 雀鬼こと桜井章一さんもよくおっしゃってますよ。「牌は柔らかく持て」って。そうすると流れができるし、流れに逆らわなくなるって。普段から泳ぐように力が抜けていたら一番いいですよね、本当はね。人間そうはいかないから、修行するんですよね、きっと。

 

CHIE 修行すると、最初にぐーっと力が入って、もうどうすることもできないってなった瞬間に、ポーンって力が抜ける。抜く状態になることが本当は大事で、抜くから、何かが入ってくるんだと思います。

 

P147

 時間は、未来から過去に向かって流れている。

 普通は逆だと思われているけど、まさにまさに。・・・

 たとえば子どもって、観たい番組があると「明日の夜七時にあの番組がある」っていうところからさかのぼって「だったら六時にはこれをして、七時までには家に帰らなきゃ」って考えるじゃないですか。つまり、未来のその時が、今の自分をつくっている。

 ところが大人になると、何かを決める時に、未来ではなく、過去の失敗で推し量ろうとする。過去に起こったことのせいで、今の自分があると思い込んでいる。過去はもう過ぎてしまったことで変えることはできないのに、それで未来が決まってしまうとしたら、生きている意味がしぼんでいく感じがしませんか。

 川の流れを思い浮かべてみてください。

 下流に向かってボールを投げても、ただ流れて、遠ざかっていくだけですよね。

 でも上流に向かってボールを投げれば、ボールが目の前に来た時にキャッチすることができる。「時間は未来から過去に向かって流れている」っていうのは、つまり、そういうことだと思うんです。ボールみたいにハッキリわかるものじゃないかもしれないけど、ふっと向こうから風が吹いてくるみたいな、かすかな予感みたいなものをキャッチできるかどうかで、今の自分が変わってくる。

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 未来に向かって、ボールを投げる。

 そういう気持ちで生きれば、流れにちょっとでも気づくことができるんじゃないか。

 かすかな予感をつかまえる。流さない。そう決めることだけで変わってくるはず。

 子どもの頃は、誰もがそういう気持ちで生きていた。過去の失敗で自分を推し量るより、その方がずっとワクワクするし、ずっと正確な気がするのです。