ジェイミー・バトラーさんという霊媒師を通して、20歳で自死したエリックが語る、その後の話。
本のタイトルの通り、死は終わりではないことを伝えてくれます。
たくさん書きとめたい所がありました。
P26
ぼくがこれからすることで、みんながどんな反応をするか、なんてことは考えなかった。それに、家族がどんなにショックを受けるか、どんなに苦しむかなんて、考えたくなかった。ただ、求めている結果だけがほしかったんだ。つまり逃げ出すことだ。
・・・
・・・これは両親のせいじゃないんだ。それに・・・実際、二人はどれだけ息子を助けようとしてくれたことか。ぼくには、誰かのせいにするつもりはこれっぽっちもなかった。
もうそんな段階ではなかったんだ。
母と姉たちとおばが出かけていく音が聞こえたとき、「さあ、いまだ。いまを逃すな」と思ったのを覚えている。・・・
・・・そこからはまるで自動運転のようだった。
・・・
・・・銃が吹き飛ばすのは、ぼくにはどうすることもできないものだけだ。アホかと思われそうだけど、自分のやろうとしていることが、死に結びつくという実感がなかった。いつもぼくを困らせるばかりで、味方になってくれない、この脳の横っちょをこいつで消し去ってやろう、くらいに思っていたんだ。
死んだあと、どこへ行くのかってことも考えていなかった。・・・
かといって、死ねばすべて終わりで、自分という存在は消えてなくなる、とも思ってなかった。もし死後の世界があるなら、それは結構だし、なくたって、いまよりはマシだろう。どっちにしろ、悪くないんじゃないか、って思った。
こうして振り返ってみると、自分の決断がまわりの人たちにどんな影響を及ぼすかを、もっと考えればよかったと思う。でもその瞬間、頭にあったのは、引き金を引きさえすれば、苦しみは消え去り、やっと解放される、という思いだけだったんだ。
・・・
銃を撃った直後、マリアの悲鳴が聞こえた。・・・
・・・マリアが廊下を走ってくる足音がする。・・・ドアを開けて、ぼくを見たマリアは、もう一度悲鳴を上げた。・・・
ぼくは部屋の中に立っていた。銃で頭を撃ったはずなのに、どうして立っているんだろう?
「クソっ、しくじった。死にそこなったんだ!」
混乱したまま見下ろすと、自分の体が見えた。そのときやっとわかったんだ。「おや、ぼくがいる。あれ、ぼくの体じゃないか」。
正直に言おう。マジでちょっとうろたえていた。自分の体の中に戻ろうとした。でも、どんなにがんばっても戻れない。それでこう思った。
「そうか、もう戻れないんだ。どうにもならないんだ。自分で決めたことだからしかたないけど、クソっ、何てことをやらかしちまったんだ。取り消したい!いまならいのちの大切さがわかる。もし元に戻せたら、証明してみせる!」
・・・
・・・
ぼくの体にすがりついて泣いている母を見ながら、ぼくは、すべてに納得していた。奇妙なことに、この自殺直後の短い間に、かなり深いレベルでこれは真実だと感じていたんだ。家族はとてもつらい思いをしただろう。でも、起こったことは何ひとつ訂正する必要も、変更する必要もない。そう思ったら、ぼくは救われた。なぜそんなふうに納得したのか、そのときはまだわかっていなかった。それでも、これでいいんだと感じていた。
・・・
・・・
家族や友人には、ちゃんとさよならを言わなければならないと感じていた。
いや、さよならを言いたいというより、知らせたかったんだ。
ぼくは大丈夫だってこと、いまも存在しつづけてるってこと、そして、みんなに感謝しているってこと。
それに、ぼくからのいっぽう的なさよならになっちゃったことも申し訳ないと思ってた。・・・