脳研究者の池谷裕二さんが、娘さんの成長を追いながら、脳の発達の気づきを説明してくれている本、興味深かったです。
こちらは記憶力と想像力のお話で、なるほど~と思いました。
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一般に、記憶力のいい人ほど、想像力がない傾向があります。なぜなら、記憶力に優れた人は、隅々までをよく思い出せるため、覚えていない部分を想像で埋める必要がないから。普段から「よくわからない部分を空想で補填する」という訓練をしていないと、想像力が育たないのです。記憶力の曖昧さは、想像力の源泉です。
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つまり、幼い子どもほど記憶力が優れているように見えるのは、・・・子どもは「正確な記憶」が得意。だから、まだ充分に有用性を発揮しきれない。それが成長によって、大人らしい「曖昧な記憶」に成熟していくわけです。
ときおり「子どもは何でもすぐに覚えられてうらやましい」と言う方がおられますが、これは間違った考えです。残念ながら脳が未熟なために、正確な記憶しかできないだけのことなのです。
ヒトの脳はサルとは違い、成長とともに「曖昧な記憶」をする部分が発達していきます。ひらがななどの文字の認識も、ゆるやかな記憶の賜物です。記憶が正確だと、お手本の「あ」と、手書きの「あ」を、同じ「あ」として読むことができません。特定の1種類の「あ」しか読めなかったら、困ります。そういった点からも、ヒトの適当な記憶力は私たちの認知の核となっていることがわかります。