健康情報

できない脳ほど自信過剰

記憶力に関わる研究報告で、印象に残ったものを書きとめてみます。

こちらは痛風の方に朗報?痛風患者は認知症になりにくいそうです。
P80
 ところで、カフェインとともに注目を集めている物質があります。「尿酸」です。尿酸は、いわゆるプリン体で、痛風の原因となる物質として有名です。
 実はカフェインもプリン体です。カフェインと尿酸の化学構造はそっくりです。おもしろいことに、カフェインも尿酸も、動物に注射すると、運動量が上がり、活発に動きまわるようになります。知り合いの脳研究者が「痛風を治療するために、薬を飲んで尿酸値を下げると、テンションまで下がってしまう」とボヤいていましたが、根拠のない話ではないでしょう。
 エラスムス大学のブリートラー博士らは大規模な調査を行い、尿酸値の高い人は、記憶力や認知機能が高く、また将来に認知症になる危険率が低いことを、慎重なデータ解析によって証明しています。
 アレクサンダー大王ミケランジェロダ・ヴィンチゲーテニュートンダーウィンなどの天才たちは、痛風に悩まされていたという記録が残っています。もちろんこの事実だけでは痛風と才能の因果までは特定できませんが、想像を掻き立てられます。
 ただし、尿酸は痛風だけでなく、血管細胞や免疫細胞を刺激して心血循環系へ有害な作用ももたらしますから、尿酸値が高い人は要注意であることは変わりません。
 なお、厳密にいえば、カフェインと尿酸とでは薬理作用が異なります。カフェインは直接的に神経興奮を導きますが、尿酸は抗酸化作用を介して脳機能を向上させるのだろうと考えられています。

こちらは散歩が記憶力を高めるというお話です。
P86
 博士らは、55〜80歳の男女60人に1日40分間の散歩を週3日続けてもらい、脳がどのように変化するかを調べました。すると半年後には、海馬のサイズが平均2%拡大し、それに伴い記憶力も高まることがわかりました。海馬の増大率が高い人ほど、記憶試験でよい成績を収めました。散歩によって体内の「脳由来神経栄養因子」(通称BDNF)の分泌量が増加しますが、これが記憶増強の鍵を握っているようです。

こちらは水分不足が記憶力低下を引き起こすというお話です。
P90
 近年、水分は健康のみならず、記憶力や学習能力にも影響することが明らかになってきました。たとえば、コネティカット大学のアームストロング博士らが一昨年発表した論文によれば、水分の損失が、たとえ体重の1%以下であっても、記憶力の低下や認知エラーが起こるといいます。1%の水分損失は、頭痛はもちろん、喉の渇きすら感じない量です。この程度の脱水は、夏季だけでなく、一年中起こりえるレベルです。
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 イースロンドン大学エドモンズ博士らが、水分補給と脳機能の関係をさらに詳しく調べています。たとえば小学校低学年の生徒58名を対象に、物語を読んで聞かせるテストを行っています。物語の内容を4択問題で思い出してもらったところ、平均点は2.8点でした。ところが20分前に約250mlの水を飲んだ生徒では、点数が約10%も上昇しました。とくに難しい問題の正答率が高まっているのが興味深いところです。
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 先月エドモンズ博士らは、同様な実験を大人に対して行っています。平均年齢29歳の男女34人を対象に、見たものを素早く判断する認知試験を行いました。大人の場合は、子どもに比べ、多くの水を飲まないと効果はなかったものの、それでも500mlほど飲めば、判断スピードが14%ほど速まることがわかりました。
 脳は身体のなかでも特に水分の多い臓器であることが知られています。総重量の70〜80%が水です。こう考えると、身体に症状が出るよりも先に、脳機能に悪影響が表れるのは当然だともいえます。