常ならず、移り変わる、変わるから生きていかれる・・・
P138
寂聴 ・・・日本人は「人はみな死ぬ」ということを無常ととらえがちだから、自分流の違う解釈を伝えるようにしましたよ。
無常は「常ならず」、つまり「同じ状態は続かない」ということ。
家を失い、肉親が死に、ひとりぼっちになった人たちの哀しみは計り知れない。でも、いま以上に不幸になることはあり得ない。この世のことはすべて生々流転、移り変わる。もうこれ以上の困難は起こらないのだと、私たちは上向きになるしかないのね。そのことを信じること。
どんなに雨が降り続いても、必ずやってくる晴れの日をじっと待つ。
必ず雨は終わる。あるとき気づけば、暗い運命にも光は射し始めるんですよ。
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一寸先がわからないことが「無常」。
これはマイナスの言葉ではなく、いまは悲しくてもやがて慰められるときが必ず来るということ。一寸先は闇である無常の世を生き延びるためには、目に見えないものに心の目を凝らすべき。目に見えないものとは、神、仏、宇宙の生命、そして人の心。
P160
寂聴 コロナ禍に巡り合って一見不幸に見えるけど、こんな時代に生きたということは後々すごく大きな財産になるんです。「不幸」はときに将来のための経験値になるというか。
私も100年近く生きてきて、「あんな思い、しなきゃよかった」と思うのではなく、「あんな思いをしたから、いまがある」
という気がするわね。いいんですよ、そういう目に遭うのは。
悔しかったり悲しかったり失望したり幻滅したりして、たくさん涙を流したほうが、最後は幸せになると思う。
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「この夢」はなくなってしまうかもしれないけれど、絶対にもうひとつ「違う夢」が、生まれてくるから。我々には思いもかけない夢がね。人間はそうやって生きてきているんです。
いま我々はこれが素晴らしいと思っているけど、次の時代も同じように素晴らしいとは思われていないじゃない?結婚制度しかり、恋愛のルールしかり。なんでも変わるんです。変わるから生きていかれるのね。
P28
寂聴 だいたい私はこのごろ、「何を始めたところですぐに死ぬじゃないか」と思う。すると逆に「だからこそ、いま、やってみるか」と思うようになった。
P144
寂聴 人間は笑わなきゃダメね。どんなときでも笑えたら、その瞬間に気が楽になりますよ。
自分を自分でほめること、そして笑うことが大事です。