瀬戸内寂聴さんと秘書の瀬尾まなほさんの対談本、面白かったです。
P76
まなほ ・・・私も息子には・・・先生が私にしてくれたみたいに、「どんなことでもやってごらん」と彼の可能性を信じたいです。
とはいえ、先生が息子のことを「俳優になれるんじゃない?」「ノーベル賞とれるんじゃない?」と言うと、「そんなの無理!」と決めつけてしまう自分がいるんですけど……(苦笑)。
寂聴 1973年に江崎玲於奈さんがノーベル物理学賞をとったでしょう。あの人のこと、よく知っているんですよ。私のお友達の憧れの人だったから、よく彼女から話を聞いていた。その玲於奈さんがノーベル賞をとれるんだから、誰でもとれるという気がある。
まなほ それがまずおかしい(笑)。でも、私は知らず知らずのうちに「息子には無理だ」と勝手に決めつけていたんだなと思ったんです。
・・・
子どもたちのやりたいことや才能の芽を、親や先生などの大人がつまんで閉じてしまうことって、結構あるのかなって……。
寂聴 この状況下で先々みんな不安に思っているからこそ、ほめることでどんどん好きなことをやらせたほうがいいんですよ。あなたの時代とは違うんだから。
コロナショックのような辛い状況に遭っても、いまの子どもにはそこを泳いでいく力があるんです。
まなほ でも、どうしてもいろいろと言いたくなる。心配で「あれしちゃダメ、これしちゃダメ」と。本人を信じたほうがいいんですよね?
寂聴 そうそう。信用して、放っておいたほうがいい。
まなほ なんていう言葉をかけてあげたらいいんですか。「あなたのことを信じているよ」って?
寂聴 「あなたはお母さんの子だから、そんなアホは産んでいないんだよ」と言えばいいのよ。
まなほ なるほど(笑)。じゃあ、何か悪いことをしたときは?
寂聴 「残念だけど、あなたにはお父さんの血も入っている」って。
まなほ (笑)でも、ほめるというか、「あなたにはこういう可能性があるのよ」と大人に言われることは、子どもにとって非常に大きいと思います。
寂聴 大きいわよ。親が心から「この子は頭がいい」と信じていたら、その子の頭はよくなりますよ。
大人が子どもに暗示をかけるのね。「お前はこんなこともできないのか!」と言えば、できなくなる。
「こんなこともできるのか、すごいな!」とほめたら、もっとできるようになる。おだてたら力がつくものなんです。