メメンとモリ

メメンとモリ

 ヨシタケシンスケさんの絶妙なイラストと、絶妙なお話が、ほんとにすばらしいなと・・・読めてよかったです。

 イラストなしで紹介してしまうと味気ないかもですが、とてもよかったので、一話だけ書きとめておきたいと思います。

 

 

メメンとモリときたないゆきだるま

 

ボクは知らなかった。

すべてのゆきだるまに意識がある、ということを。

気がついたら、ボクはすでに、きたないゆきだるまだった。

最初の記憶は、

「なんかみんながボクを見てガッカリしてる」だった。

わかるよ。

「こんなはずじゃなかった」って思うよね。

雪が少なかったんだ。

でも、彼らはいっしょうけんめいつくったんだ。

だれもわるくない。

だけど、だれも、しあわせじゃない。

ボクはどうせすぐとけちゃうよ。

ボクは一体、何だったんだろうな。

こんど、もし、ボクが人間だったら、

世界中を旅してきたないゆきだるまの写真を撮ってまわろう。

ガッカリされたものたちを、探してまわろう。

そして「昔、ボクもきたないゆきだるまだったんだぜ」って、声をかけよう。

「きみは、ボクは、何だったんだろうねえ」。

いっしょに考えながら、とけていくのを見ていてあげるんだ。

ちょっと、たのしみだな。

どんなカメラを、買おうかな。

最初はどこに探しにいこうかな。

どんなゆきだるまでも、ボクは絶対、ガッカリしない。

大よろこびで近づいていったら、みんなきっと、びっくりするだろうな。

きっとうれしいと思うんだ。

ボクがしてほしかったことを、してあげるんだ。

だから、今、ボクがしてほしいことをたくさん考えておこう。

だれかのために。

ボクのために。

たのしみだな…

何をしてあげようかな…

何をしてもらおうかな…