健康にいいこと

命の限り、笑って生きたい

 できる範囲で人のために尽くす、笑ってしゃべってよく眠る、日々そんな風にありたいなと思います。

 

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まなほ 人の幸せのために尽くすことが、尽くした人の活力になる、生きがいになると、先生はいつもお話しになっていますけど、それって仏教の「忘己利他」のことですね。

 

寂聴 そう、自分のことはおいておき、人の幸せのために尽くすということね。天台宗の開祖・最澄さんのお言葉で、それが天台宗の根本の教えなの。人間って自分のことだけしか考えないものでしょう。でも、自分さえよければいいという生き方は、やっぱり間違っているのよ。

 

まなほ 私もそうですけど、人間って給料をいっぱいもらいたいとか、いい服を着て、おいしいもの食べて、健康で、幸せにいたいって願うものじゃないですか。その自分の欲求を脇に置いといて、人の幸せのために尽くすというのは、なかなかできないと思うんです。

 

寂聴 そのとおりよ。私たち凡人、つまりおバカさんにはなかなかできません。だからこそ最澄さんは「心がけなさい」と教えていらっしゃるのです。ですから、毎日じゃなくてたまにでもいいから、自分のできる範囲で人のために尽くす。それでいいのです。

 

まなほ よかった。それなら私でもできるかも(笑)。

 でも私から見ると先生はいつも、その「忘己利他」を実践していると思います。寂庵での法話の会も写経の会についても、もう96歳なのだから無理をせずにお寺の門を閉めて、ご自分のペースで小説だけを書けばいいって言ってくださる方も大勢いますよね。

 先生が「そうだよね」って言いながらも、なお続けている理由というのは、やっぱり人のため、生きているうちは僧侶としての義務を果たさなければいけない、という気持ちがあるのだろうと思っています。

 ・・・

寂聴 でもね、自分のためだけに生きるのはつまらない。人のために尽くすことが、結局は生きる励みになったり、活力になったりするのです。

 健康法と呼ばれるものはいろいろありますが、私が法話で皆さんに勧めているのは、笑うこと。それがいちばん簡単で効果があると思っています。笑う、そして、しゃべる!それにつきます。

 

まなほ そして、食べる、寝る(笑)。

 

寂聴 ・・・最後はもうぐっすり眠ること。笑って、しゃべって、食べて、ぐっすり寝る。そうしたら、だいたい健康に生きることができますよ。