自信

養老孟司vsテリー伊藤 私はオバサンになりたい! (宝島SUGOI文庫)

「変わっても大丈夫だ」ということを知る、自信ってそういうことだよなと思いました。

P212
テリー ・・・自信を持つってことは、変化してるってことなんですね。違う自分になってるっていうこと。

養老 そうなんだ。それはさあ、「何かが出来たから自信がついた」と思われがちだけど、本当はそうじゃないと思う。大事なのは「変わる」ということなんだ。
「できなかった自分」から「できた自分」へ変わっているということが重要なのであって「何かができた」ということ自体が大事なんじゃないんだよ。つまり「変わっても大丈夫だ」ということを知ると、それが自信になるんだ。・・・「いまの自分だけが自分じゃない」ってことを知るかどうかなんだ。・・・「ここまでやってきた」というここまでの自分が、また先まで行くと次の自分になる。そうやって進んでいくこと、つまり、変われるってことが自信なんです。変われる前は変われた後の状態は絶対に想像がつかないから「俺、大丈夫か?」ってハラハラしている。それが自信がないってことでしょ。・・・できたから自信がついたんじゃないんだ。変われたから、自信がついたんだよ。・・・「何かができる」ってことが自信になるんだったら、すごい高いハードルでしょ。自信をつけるためには、そんなに高いハードルは必要ないんです。・・・

P97
養老 ・・・自分の内側の問題ですよ。自分が変わるのを怖れないことが勇気なんだ。たとえば、亡くなった作家の日野敬三さんの思い出として、・・・あるとき、日野さんが、「一度、解剖を見せてくれませんか」って言い出したの。まもなくして、「きょう、これからちょうど解剖をしますから、来ませんか?」って誘ったら、しばらく考えて、「やっぱりやめる」って言うわけ。「どうしたんですか?」って聞いたら「いや、そういうものを見ると自分が変わってしまうおそれがある」って言うんだ。作家にとって、自分の感性が変わっちゃうっていうのは困るんだろうね。

テリー 作品が変わっちゃうから。

養老 そうそう。それがいいことなのか悪いことなのか、僕にはわかんないから、「そうですか」と言うしかなかった。でも、結局、その後しばらくたってから、日野さんは見に来たけどね。

テリー でも、日野さんの気持ちもわかる気がするなあ。自分の感性を信じているとすれば、それが変わっちゃうのは当然、怖いと思うんじゃないかな。

養老 怖くても怖くなくても、本来、それは日々、変わっているんですよ。もっと言うと、自分が変わるということは「前の自分が死んで新しい自分になる」ということです。だれだって死ぬのは怖い。でも、実は、そうやって変わるということは、部分的に死ぬということなんです。だから、しょっちゅう死んでいる人間というのは、まさに生きているということなんです。・・・死にたがらないというのは、生きていないのと同じなんだ。何度も自分が勇気を持って変わってきた人は、そのときそのときでいくつも自分を捨てているんです。そうやって自分を何度も捨てているから、最後に本当に全部なくなったって「何もいまさら驚くことはねえや」って思えるはずです。


ところでこの週末は、伊豆高原のやすらぎの里でハート瞑想リトリートhttp://www.y-sato.com/news/15589.htmlのお手伝いをするので、数日ブログをお休みします。
いつも見てくださってありがとうございます(*^_^*)