変えなくていいことと変わったこと

周防正行のバレエ入門

 「この人となら、何も変えなくていい」と思えたって素敵だなと思いました。一方で、食事で生き方が変わるというのも、興味深かったです。

 

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周防 僕は初めて民ちゃんに会ったときに、半径五メートル以内には近づけないような、触れもできない感じだったのに、気がついたら結婚していた(笑)。民ちゃんは、バレリーナであり続けることと、結婚することとの関係はどう思っていたの?

 

草刈 漠然と、いつか結婚できると思っていた(笑)。でも、正ちゃんに惹かれたのは、あなたの聡明さですね(笑)。撮影中でも、どんなことでも明確に説明していたり。そういう姿を見ていて、信頼をしていたので、結婚する流れになっても何も迷わなかった。バレリーナであることと結婚の関係なんて、深く考えなかったかもしれない。でも、「この人となら、何も変えなくていい」と思えたのは大きかった。それが結婚を決めたいちばんの要因だったかも(笑)。結婚することで、自分が大きく変わらなきゃいけないとか、今までとはまったく違う方向性のものを求められていたら、ちょっと迷ったはず。正ちゃんにはそういうのがまったくなかったから。結婚して私が代わったのはどういうところなんだろう?基本的にはそんなに変わってないんじゃない?二人とも。人間的に成長すべき部分は成長していると思うけど。

 

周防 我慢とか?(笑)

 

草刈 そうそう(笑)

 

周防 結婚した当初、民ちゃんはしょっちゅう鍼治療に行っていたよね。

 

草刈 怪我から復帰した後も腰は完全に治っていなかったからね。疲れると腰が痛かったし、痛みが出ると踊れないから。酷くなるのが怖くて、常にその予防をしていた。でもこの繰り返しだと、踊れてもあと二~三年で、そんなに長くは踊れないだろうなとも思っていた。そんなときにメンタル&フィジカルトレーナーの木津龍馬さんと知り合い、食事を変えるといいとアドバイスをもらったの。

 

周防 肉を食べなくなって、長いよね。僕は外食のとき、民ちゃんと一緒じゃないときにはなるたけ肉を食べて、二人のときは魚を食べるようにしているけど。

 

草刈 私はお肉を食べないほうが調子が良くなった。中学のときからよく胃痙攣も起こしていたし、もともと胃が弱かったから、動物性の油とかが合わなかった。それにお肉は消化するのにエネルギーと酵素を使うので、消化するだけでもエネルギーを消耗するんだって。・・・

 ・・・

 考えてみると、食べものって、唯一身体の中に直接的に入るものでしょ。血でも筋肉でも骨でも、すべて食べるものからつくられる。だから摂らないほうがいいものを摂取すると血も汚れる。・・・しかも血は脳にも巡っているわけで、血が綺麗になると思考まで変わる。この話を木津さんから聞いたときは、なるほど、と思った。実際、食事を変えた何年か後に、気づいたら精神的にもゆとりができていて、前みたいに過敏な反応をしなくなっていた。苛々するのも食事と深い関係があるということを実感したし。木津さんいわく「血が綺麗になると智も綺麗になる」と。

 あと、言われて納得したのは、食べものの嗜好や、食事の仕方というのは、自分の癖がもっとも反映するところ。だから、食事を変えれば自分が変わる、と。食餌療法は大変なように見えて、実はいちばんの近道だというのね。・・・生き方そのものに影響するというか。・・・