夫婦っておもしろい

周防正行のバレエ入門

 バレエが好きなので手に取った本、でもバレエの話より、草刈民代さん周防正行さん夫婦の話が面白かったかも(笑)いい関係だな~と思いました。

 

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 ・・・草刈民代に初めて会ったとき、「近寄りがたい」と思ったことがキャスティングの決め手になったにもかかわらず、僕は彼女と結婚してしまった。それはなぜかといえば、・・・第一印象と違って、実はざっくばらんで竹を割ったような性格の江戸っ子という感じだった。・・・「・・・草刈さんはどういう人ですか」という質問を映画の撮影中から公開前にかけてよく受けていたのだが、「日本一の正直者」と答えていた。まったく悪気なく本当のことを誰にでも言うから、誤解をされたり、人を傷つけたりすることもあるかもしれないが、すがすがしいまでの正直者だと思った。・・・

 ・・・

 草刈が母親に結婚すると言ったとき、母は「誰と?」と聞き返してきたらしい。結婚などするような娘ではないと信じて疑っていなかったようだ。そして、僕が挨拶に伺うと約束した日、少し遅刻してしまったのだが、お母さんは「(結婚は)本当なの?」とあたかも娘の勘違いなのではないかとまだ疑っていたらしい。また、お父さんは「監督は君のこと知っているのか?」とまじめな顔で草刈に尋ねたと言う。今答えるとすれば「知らなかった」と言うしかない。

 知らなかったことは次から次へと起こった。

 まずは「ぱなし」であった。

 明かりをつけたらつけっぱなし、ドアを開けたら開けっぱなし、ということが結婚してすぐにわかった。朝、草刈が稽古に出かけてから僕が起きると、草刈が出かけるまでにどう行動したかがわかるくらい痕跡が残っていた。・・・一つのことに集中するとほかのものがまったく見えなくなってしまうのかもしれない。例えば、ジュースが飲みたくなって冷蔵庫を開け、ジュースを取り出し喉に流し込めばもうそれで目的は果たせたから、ジュースの瓶はテーブルの上に置きっぱなしになるというように。結果、後片付けは僕の仕事となった。

 買い物に行き、どちらを買おうか迷ったときは両方買う。僕の場合は迷ったら買わない。少し時間を置いて考えてから出直す。すると両方なくなっていることがあり、「だから見つけたときに買わないとダメなのよ」と草刈に言われたりする。さらに草刈はたくさん並んだ同じ種類の商品があれば、迷わずにいちばん高いものを買う。例えば納豆を買いに行ったとすると、何種類もの納豆の中からいちばん高いものを即決で買う。僕はじっくりと内容量や原材料などを確認し、できれば安いもので、これが美味しそうだと思ったものを買う。

 草刈は、何をするにも膝を曲げなかった。膝を曲げずに腰だけを折って床のものを拾い、冷蔵庫の下のほうにあるものは腰を折って頭を下げ片足を高く後ろに挙げながら手に取り、床に座るときはしばしば相撲の股割のように一八〇度開脚し、足先までピンと伸した。いかなるときにもストレッチをかかさないのである。・・・