ちょっと死んでみる

心身養生のコツ

 神田橋先生が患者さんにおすすめしている方法の一つに、「ちょっと死んでみる」というワークがありました。これはいいなぁと思いました。

 

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 うつ的な気分になったとき、死にたくなる人は多いものです。これは症状です。ですから、ここにも自然治癒力の表れがあります。それを活用するのが、『ちょっと死んでみる』法です。これはヨーガの死体のポーズの応用です。・・・仰向けに寝ます。このとき、掌を床に向けてください。掌と足の裏は同じ方向を向いているほうが体にとって『気持ちがいい』です。・・・

 そして、目を閉じて「わたしは死んだ」とこころのうちでつぶやきます。次に、死んだわたしの体から、皮膚や肉が溶けてゆき、大地に吸い込まれてゆき、きれいな白骨だけが残るとイメージします。そして、白骨をつないでいる靱帯も溶けて流れ、白骨はパラパラになるとイメージしましょう。ここで、「風が吹くと骨が揺れる」と「こころ」でつぶやいて、風が吹く代わりに、ごくかすかに体を揺らしてみましょう。そうすると、まだ皮膚や肉が溶けきっていない部分が感じられます。そこに注意を集中して、「溶けてゆく溶けてゆく」とイメージしましょう。

 全身の白骨がパラパラになったら、その状態を、一分でも五分でも好きなだけ続けます。このときも『気持ちがいい』が大切です。

 死んだ状態が続いたら、次に、「わたしは生まれ変わる」と「こころ」のうちでつぶやきます。まず手足の先から中心へ向けて、次々に骨がつながってきて、そして大地の中で浄化された肉と皮とが地からわき上がって骨を包みます。胸や顔のところで肉や皮が合わさって全身が完成したら、目を開きます。そして起き上がってください。どうですか。いま『気持ちがいい』なら、この方法はあなたに合っているのです。気が向いたときにしてください。

 考えてみると、死ぬことは、すべてを投げ出すことの極致、終極の『退行』ですね。この方法を寝る前にしてそのまま眠ってしまう人もいます。そして朝目覚めたときに、「生まれ変わる」をするのです。・・・