こちらは作家の佐藤愛子さんとの対談です。
横尾 ・・・週刊誌にスキャンダル記事が毎週いっぱい出るじゃないですか。僕はあのスキャンダル記事が好きで、毎週何冊も買うんですよ。するとその中に、因果応報と自業自得の仏教的な世界が見えてくるんですね。こんなことをしたら当然、結果は見えてるじゃないかと感じたりします。その中に因縁のような縁も絡んでくる。スキャンダルっていうのは自然の摂理に従っていますよ。なるようになっていくものなんですよね。
佐藤 それ、私もそう思いますね。
横尾 と言って、「人のためにやっているんですよ」って大義名分だけで生きてる人ってのは今度偽善者になってしまって、それまた向こうへ行くと、またかなりレベルの低いところに落とされるっていうことも。
佐藤 だからこの現世での善悪は、必ずしもあの世では通用しないってことですよ。
横尾 そうですね。するとやっぱり、こっちの世界は虚で、向こうが実ということになりますね。
佐藤 ね?この世での善っていうのは果たして向こうに行ったら善として認められるかどうかって。悪もそうだと思うんですね。
横尾 そうですね。慈善活動も売名行為はダメでしょう。やるなら陰徳でなきゃダメだと思いますよ。こちらでは権力者が都合の良いように法律を作ったりしてるわけでしょ?向こうは大自然とか大宇宙の法則に従った法律っていうか。そのルールにのっかっているわけだから、全然違うんですよね。
佐藤 その通りです。
横尾 だから向こうの法則を、こちらに当てはめるとこちらではほとんど生きていけなくなる。
佐藤 本当にそうなんですよ。
横尾 ネ?どうしますかね。
・・・
横尾 むしろ、見える世界よりも、見えない世界のほうが信頼が出来るっていうのかな。人にペラペラ言えないような体験が積み重なったことを、これ自体も僕の現実としてとらえていたからだと思います。年を取ってから、ダンテやスウェーデンボルグやシュタイナーなど読みましたが、体験と感性の確認作業をしたというか。・・・
・・・
向こうも日常だし、こちらも日常だけれども、向こうから見ると、こちらが非日常になってもおかしくないわけですよね。そういう経験をわりかし積んできたので、・・・佐藤さんの本も共感しながら読んでいました。