YOKOOLIFE 横尾忠則の生活

YOKOO LIFE 横尾忠則の生活

 とても面白かったです。

 昨日挙げた本にも出てきましたが、こちらにもUFOが・・・

 

P9

 大学で絵を教えるときは、

「どうやって描いたの?」

 そればっかり生徒に訊いてる。

 自分が生徒のいいとこを、まねしようと思ってるから。

 そう聞かれたほうは、自信持っちゃうんですね。

「教える」って、結局そういうことじゃないでしょうか。

 相手が自信を持っちゃえば、

 もうそれでいいと思う。

 

P76

糸井 横尾さんは絵を買うときに値段を気にしますか?

横尾 それ以前に、まずぼくは家にお金がいくらあるか知らないんだよ。

糸井 わははは。

横尾 うちのかみさんしか知らない。だから、買うものが八百万なのか一千万なのかもわからないうちに「これが欲しい」と言う。お金はかみさんが払うから結局わからない。

糸井 きっと横尾さんは、いまも昔も「お小遣いで暮らす人」ですね。

横尾 あんまり使うことがないからね。

糸井 生活必需品で生きてる感じがしないです。

横尾 いや、そういう絵のたぐいが、ぼくにとっては生活必需品なんですよ。

糸井 ああ、そうかそうか。

横尾 うん。たとえばぼくがUFOが好きだったときは、UFOが生活必需品だった。あれがないと困るんです。

糸井 そうなんでしょうね。

横尾 「昨日は見たけど、今日は見てないじゃないか!」ということになるわけですよ。

糸井 UFOがもっとも身近なものであった、と。

横尾 うん。いまはもう関心が薄れたので、UFOが出たって、どうってことないけどね。いまはUFOより猫のほうが生活必需品になったから。

糸井 ある意味、UFOは家族だったんでしょうね。

横尾 あのね、みなさんはUFOが幻想だとか無意識から出るものだとか、ややこしいこと言うけど、そんな話じゃないんですよ。本当に出るんですよ。あんまりムキになって言うとあれだから……。

糸井 違う次元の話になりますからね。

横尾 いまは自分の中に内在化している。

糸井 絵の話に戻りますが、いま、個人の家や事務所で絵をどこに飾るか考えるのは、ちょっと難しいですね。公共の場所でも、絵が大きければ大きいほど飾る場所がなくなってきているかもしれない。

横尾 そういう「置く場所を考えて絵を買う」なんていうことじゃダメだよ。物質としてしか絵を考えていない。そうじゃなくて「置くとこがなくても買いたい!」っていうのがないとさ。

糸井 ダメですか。

横尾 まぁ、なんというか、絵はもっと精神的なものだよね。「この絵を買ってトイレに置こうかな?玄関に置こうかな?」なんて思いながら買うんじゃなくて。

 

P125

横尾 糸井さんはいくつになったの?

糸井 六九です。

横尾 年ってさ、追い越されることがあるとおもしろいよね。

糸井 それは意外とないですね(笑)。

横尾 肉体年齢と精神年齢は乖離しているから、みんな自分で精神年齢を登録したらいいんじゃないの?背番号みたいにTシャツに入れておくの。

糸井 横尾さんはぼくの十二歳上ですが、そうとう若く見えますからね。髪は染めてますか?

横尾 染めてない。このへんには白い髪があるでしょ?

糸井 ああ、少しだけありますね。

 ・・・

 横尾さんはパーマですか?

横尾 年に一回か二回、パーマあててます。髪は毎日洗ったりしないよ。歯も朝一回磨くだけだし。

糸井 そこも猫派なんですね。

横尾 それなのに歯は丈夫。

糸井 わけがわかんない。

横尾 要は考え方です。

糸井 ……そうかもしれないって、ちょっと思います。

 

P148

横尾 ・・・野心とか野望とか、競争意識は持っていたほうがいい。ただ、それをどれだけ吐き出せるかが問題です。吐き出しさえすれば、社会的に評価されるなんてことは関係なくなる。吐き出しきった人は、ある意味偏った、人から理解されないかもしれない場所に行く。そこから先に、今度は「どうでもいい」という世界が待っています。そうなると、技術はもう、関係なくなるじゃないですか。

糸井 うーん、そうですね。

横尾 何かをあらわしたいと思っている間はダメなんだ。「あらわれた」というのはいいけどさ。これは難しいですよね、難しいけどもおもしろい。だからね、ぼくは、年齢的に長生きしないと損だと思う。

糸井 はい、それは思います。

横尾 長生きすればするだけ、自分が新しいゾーンに入っていくからね。知らないゾーンに入ったときは、いつも初心者になれます。そんな簡単に「初心に戻れ」ったって戻れないですよ。

糸井 なのに、長生きするだけでどんどん初心に。

横尾 そうそう。誰だって先は見えないんだから。

 

P170

横尾 スマホを買って一年ほど経つわけだけれども、これまで何人かに操作方法を教えてもらったの。でもそういう人って自分が慣れていて知識があるから、ポンポンポンとやってしまうわけ。こっちはわからないままですよ。・・・

 ・・・

 こんなんね、死んだら誰でもできるよ。

糸井 ああ、そうですね。交信したり、何かすぐ調べがついたり。

横尾 死んでからはオールマイティで、すべてのことがわかるんだから。死んでからの生活を、スマホを通じていまの人たちはやってるんだよ。むこうに行ったら、こんなもんなしでもできるよ。地上のことがすべてわかる。死後の世界に行くためのスタディをいまやってるとすれば、現世でスマホばっかりやってる人が死ぬと、これを持ったまま死ぬわけだから、向こうでも気づかずにスマホだけをやっちゃうんじゃないかな。霊界のほうがもっとすごいのに。

糸井 それは気をつけないと。スマホばっかりしないように。

横尾 まぁ、これは霊界からのプレゼントみたいなものでしょう。シミュレーションだと思っていればいいよ。

 

P210

横尾 考えより身体のほうが本物に近いはずでしょう。

 ・・・

 ・・・だから、「気分で物事を判断する」のがいちばん正しいってことになってくるんだよ。そこに、知識だとか教養とか妙な経験が入ってくると、今度は自分で分類をどんどん創造していってしまうんだよね。そんなのはもう、ほっちらかしておいたほうがいいんだよ。

糸井 知識の枠の中につい分類していきたくなってしまうんです。たとえばぼくにはよくあることなんですけれども、「わかった!」って言っているときに、何がわかったか自分でもわからないってことがあるんです。

横尾 ある、ある。

糸井 そのときが、ぼくはいちばんたのしいです。

横尾 うん。それをさらに分析したり追究する必要はまったくないんです。

糸井 そうですね。

横尾 放っておいたほうがいいんですよ。放っとくよりしょうがない。

 

P228

横尾 団体の中にトリックスターがひとりいると、すごく円滑になるんですよ。トリックスターのいない企業はだいたいダメです。でもトリックスターって、普通は排除されちゃうの。

糸井 ぼくは自分がトリックスターだから大丈夫です。

横尾 ほぼ日の場合、排除できない場所にトリックスターがいるんだね。排除する役も糸井さんは自分でやるしかないの?

糸井 自分としては引き際があるのかもしれないと思っています。でもひとまわり年上の横尾さんを見ていると「十二年経ってこのくらいのトリックスターでいられるんだったら、引かないほうがいいのかもしれない」とも思います。

横尾 そうだね。引くことなんて考えないほうがいいと思うよ。

糸井 みんな同じこと言うなあ(笑)。

横尾 考えなくていいよ。「なったときにはそれでいいじゃないか」でいいと思います。

糸井 横尾さんにも言われた、永ちゃんにも言われた、矢野顕子にも言われた、かみさんにも言われました。「なるときはそうなるんだから」って。

横尾 ぼくの考え方の根本的な原理があるとすれば、それは「なるようになる」というものです。それはまったくそうなんですよ。なるようになる。ならないようにはならない。なるようにしかならない。運命はいくらでも変えられますが、運命に抵抗しながらどんどん変えていって、あげくの果てに人生失敗する人がどれほど多いことか。

糸井 そうですね。

横尾 ぼくは面倒くさがりだから、運命に従う。もし運命がダメだったら、ぼくもダメです。でも、運命がよければ、それはいいことになるわけだ。運命はよかったり悪かったりします。「なるようにしかならない」という基本的な姿勢は子どもの頃から身についています。

糸井 ぼくは横尾さんほどそうなれてないなぁ。

横尾 「面倒くさい」というのがぼくの口癖って糸井さんは言うでしょ?

糸井 はい。

横尾 面倒くさがりというのはつまり、自分の主体性がないということなんですよ。運命や他人の主体性に便乗しているんです。そうするとすごくらくなの。