不可能なことなんてないのかも・・・

ソマリランドからアメリカを超える 辺境の学校で爆発する才能

 高野秀行さんの本を読んでいたら、ソマリランドの一見無茶苦茶に見える社会の奥深さに興味が高まり、この「ソマリランドからアメリカを超える」も読んでみました。

 これは、アメリカ人がソマリランドに高校を作り、ハーバードをはじめとするアメリカの大学に送りこむまでの話です。大変なトラブルの連続で、それでもなんとか事態が進んでいくのを読むと、世界に不可能なことなんてないのかもしれない・・・と思えるほどでした。それだけに、子どもたちの成長が書かれているところを読んだら、涙が出ました。

 抜粋が難しかったので、最後に付いていた、高野さんが書いた解説を一部書きとめておきます。

 

P321

 ソマリランドに先進国の人間や組織がきちんとした学校を作ることは、私が思いつくうえで最も重要なことであり、同時に最も難しいことでもある。理由はひとつ。同国が「未承認国家」だから。

 ソマリランドはかつてソマリアと呼ばれる国の一部であったが、ソマリア軍事独裁政権が倒れ、全土が内戦状態に突入したあと、ソマリランドの人々はいち早く自力で内戦を終結させた。・・・

 しかし、ひじょうに残念なことに、国際社会はいまだにソマリランドを国家として承認していない。ソマリアの一部としか見ていないのだ。これがいかにソマリランドの住民を苦しめているかは形容しがたい。

 途上国はどこも国家運営を国際社会からの援助に頼っているのに、ソマリランドは極端にそれが少ない。援助はすべてソマリアの首都モガディショに行ってしまう。

 外国人による投資も湾岸諸国以外からはほとんどない。・・・「危険地帯」扱いになってしまうからだ。・・・

 かくして、ソマリランドは他のアフリカ諸国以上に資金難に苦しんでいる。そして、本当は教育こそ真っ先に充実させるべきなのに、利権が少ないために常に後回しにされてしまう。・・・

 もう一つ、未承認国家の人にとって辛いのは、「国外に行けない」ということである。ソマリランドにもパスポートは当然あるが、世界中の誰も認めていない国のパスポートに何の価値もない。使えるのはせいぜいエチオピアぐらいだ。

 これは特に若者にとって深刻な事態だ。国内にろくな高校や大学がないから海外に留学したいと思っても、渡航することができない。

 ・・・

 ・・・国が平和で(ある程度)民主的であっても、閉鎖空間には夢も将来性もない。

 ・・・

 ここまで書けば、アバルソ高校の設立がどれだけ意義のあることか、よくわかるだろう。

 私は本書を読んで二つのことにいたく感銘を受けた。

 一つはソマリランドの若者の「飢え」。・・・

 「もっと勉強したいけど、する環境がない」―これこそが「飢え」だ。

 飢えている若者に適切な水や食料を与えると驚くほどの勢いで摂取し、爆発的に成長する。そうでなければ、日本とは比較にならないほど貧弱な教育しか受けていないアバルソ高校の新入生が数年後にはハーバード大やイェール大に合格してしまうことの説明がつかない。

 もう一つ、感銘を受けたのはアメリカ人のパワーだ。クレイジーさといってもいい。著者はソマリランドのことをろくに知りもせず学校を作ってしまった。だから後で大揉めに揉めるわけだが、とにかく始めて、しかもやり通してしまう。学校の先生も、保険のきかない、病院もろくにない未承認国家で、ほとんどボランティア並みの待遇で教えている。

 著者の周囲のアメリカ人たちも、最初は冷笑していた人でも、成果が出始めると、積極的に支援を申し出る。そこには「どんなバカでもやった者がえらい」という単純明快なフロンティアスピリットが感じられる。・・・

 

 ところで、1週間ほどブログをお休みします。

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