世につまらない本はない

世につまらない本はない (朝日文庫)

養老孟司さんのエッセイ&鼎談の本を読みました。
ここは、私も似たようなことを考えてるなと思ったところ…この人には世界はこのように見えていて、私には世界はこのように見えていて、ほんとに一人一人見事に違うものだなーと、そういう意味でもこの世はバーチャルリアリティだな〜と思います。

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 私はもともと精神科に興味がありました。はじめは、相手の心理を読むということをしました。でも、相手の心理なんか読んだって意味がないということが、だんだんわかってきました。人の頭の中なんて、わかるわけがない。
 そうすると今度は、相手がどうやってものを見ているかということを、むしろ素直に受けとめるようになりました。
 その結果、その人の見方では見えないものは、いったい何だというふうに考えるようになったのです。
 逆にいえば、そういう読み方をしていくと、普通の人がどういうふうな筋道でものを考えているのかが、わかってくる。だから本というのは非常に大事で、つまり、ふだんは見えていない普通の人の考え方が、本の中で発見できるわけです。
 私はくだらない本もいっぱい読みます。いまもアメリカのファンタジーを持っています。どうしてファンタジーを読むかというと、アメリカの常識はこうなんだな、というのがわかるからです。
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 つまり、中身を読むよりは形を読む。一般的には読書をするというのは、本の内容を理解することでしょうが、それがすべてではない、ということです。
 そういう読み方ができるようになると、本が別の意味でおもしろくなってくる。「世につまらない本がない」というのは、そこなのです。
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 本を選ぶのに工夫はありません。とりあえず、おもしろそうだなと思うものを手にする。ベストセラーは必ずしも読むわけではない。そして、自分が考えもしなかったことを書いてある本が、一番楽しい。
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 人間は一人ひとり違うという前提から入ると、本を一生懸命読むんです。人間は同じだという前提から入ると、違っているのが気にいらないわけです。
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 ・・・人間ってこんなに違っていて話が通じないものなんだな、ということを感じている人ほど、人のことを知りたがるはずなんです。そこで本を読む。