あとがきに載っていたこのエピソード、勇気の出るお話でした。
何か成し遂げるということじゃなく、人生冒険だ♪と思って日々を過ごす、それが大事だなと思いました。
ちょっと長くなりますが、書きとめておきます。
P230
この本を書こうと思った直接のきっかけは、税所篤快さんの存在です。
この本の最初に触れましたが、
「90年の人生を振り返って唯一後悔してることはなんですか?」
というアンケートに対して90%の人が「もっと冒険しておけばよかった」と答えたそうです。
実は、この話は、僕の処女作である『3秒でハッピーになる名言セラピー』にも書きました。それを読んでくれた、当時中学生の税所さんは、こう考えたそうです。
普通にこのまま人生を過ごしたら、人生の最後の瞬間に後悔することになる。
このままの生き方でいいのか?
税所さんは自分にそう問いました。
彼の出した結論は……「ならば、人生を冒険として生きよう」。
そう決意した彼が大学生になり、1冊の本と出会います。
坪井ひそみさんの『グラミン銀行を知っていますか?』という本。
・・・
彼は、読み終わるや、すぐにその本の作者の坪井ひろみさんの秋田大学に連絡しました。
「先生の著書を読んで……あのう、感動して……。あ……、あの、会いに行っていいですか?」
「い、いつでしょう?」と坪井先生は返した。彼はいった。
「明日」
翌日、着なれないスーツに着替えて朝の9時、秋田大学に乗り込んだ。坪井先生の研究室のドアには「ようこそ!」と彼を歓迎する貼り紙がしてあった。坪井先生はこういっています。
「メールや手紙をくれる人は多いけど、本を読んだその日の夜行バスで秋田まで駆けつけてきたのは彼が初めてです」
人生を冒険として生きるとは、やりたいことを来年にのばす人生ではないんです。
「感」じたら、すぐに「動」くということです。その先に「感動」があります。
坪井先生との出会いからご縁が広がり、彼はアジア最貧国バングラデシュに乗り込みます。・・・バングラデシュでは、教師が4万人足りなかった。だから、貧しい農村部に生まれた子どもたちは教育を受けられず、貧富の格差が開く一方なのです。
貧乏というだけで可能性が閉ざされる。この状況をなんとかしてあげたい。
でも、大学生の彼に、なんとかできるわけがない……と、彼は思わなかった。
・・・
彼は高校のとき落ちこぼれだった。・・・
しかしそんな落ちこぼれだった彼は、予備校の東進ハイスクールに通い生まれ変わるのです。東進ハイスクールは全科目、最強の教師しかいません。収録された映像で授業をするので、最強の教師がひとりいれば十分なのです。
実は、彼は、この映像教育のスタイルをバングラデシュに導入して教育革命を起こすのです。
・・・
何度も何度も挫折をくりかえしながらも、それでもやりとげた税所篤快さん。現在、彼はまだ現役大学生の22歳です。
「あそこの教室の先生は、箱の中にいる」と話題になり、「農村部で革命と呼ばれる授業が始まる」とバングラデシュの新聞では6紙に取り上げられました。
・・・
実は、このプロジェクトの立ちゆきが懸念される問題が続出した時期がありました。追い打ちをかけるように、資金が強盗に奪われた。雇った先生にもお金が払えない……絶体絶命のピンチです。打ちひしがれる彼に、恩師が封筒を渡してくれました。
その封筒の中には1年間分のプロジェクト運営費が入っていました。
そして、恩師はこういってくれた。
「『我、事において後悔せず』といったのは宮本武蔵ですが、要するに自己批判なんて安易なごまかしか、暇人がするものであって、前進している人には自己批判も言い訳もないのです。ただ前に進む。『僕に言い訳はない』の精神でがんばってください」
ホンキで夢に向かうとき、ホンキでそれを支えてくれる人との出会いがあります。
ホンキで人生に向き合うとき、感謝の気持ちが自然に湧き上がります。
この思いこそ、死ぬ前に思い出したいワンシーンになるはずです。
90%の人は90歳を超えて人生を振り返ったときに、「もっと冒険しておけばよかった」と思う。ならば、人生を冒険として生きる、そう決めた税所さんは、この話を教えてくれた僕にお礼をしたいとわざわざ訪ねてきてくれたのです。