妖怪人間ベラの授業

 再開です(^^)

杏のふむふむ (ちくま文庫)

「杏の気分ほろほろ」がとてもよかったので、こちらも読んでみました。

 すっかり杏さんのファンになりました(^^)

 ここは妖怪人間ベラの役になって小学校で授業をするために杏さんが書いた台本で、役に立ついい話だな~と思ったところです。

 

P242 

 ……それでどうだい、なんかなりたいもの、見つかったかい?

 手、挙げてごらん?

 ……見つかっていない子もいるねぇ。

 いいのさ、今はそれで。

 でも、ずっとそのままじゃあいけないのさ。

 アタシらは見てきた。人間があっというまに年を取るのを。

 そんなことない、とアンタら子供は言うかもしれないねぇ。

 周りの大人に聞いてごらんよ。

「あなたは、気付いたら今のあなたですか?」って。

 答えは、どんな年齢でも、変わらないと思うねぇ。

 だってそうだろ?アンタらだって気付いたら今の年齢なんだ。

 そして気付いたら二十歳、気付いたら五十歳……。

 

 時間は誰にでも平等さ。

 

 そんなアンタらが、近い未来に何かを見つけるにはどうしたらいいか。

 見つけようったって簡単に見つけられるものでもないんだ。

 でもね、そんな今を今のままにせず、ちょっとだけ面白いものに変えるおまじないってのを、教えてやろうかね。

「〝これで良い〟より、〝これが良い〟」

 違いがわかるかい?

 いいかい、アンタらは選べるんだ。

 お金なんか使わなくたってできるんだよ。

 試しに、毎日毎日、選ぼうと思って周りを見てごらんよ。

 階段をどっちの足から上ろうか?給食のおかず、どれから食べてやろうか。

 そんなことでも構わないのさ。

 どの本を読もうかとか、アイスを食べるとき、バニラにしようか、チョコにしようか、考えるだけでもいいんだ。

 大切なのは、選ぶときに「これで良い」じゃなくて「これが良い」って思うことさ。

「これが良い」って選んだことは、後でしくじったって、そのときの自分がそう思ったんだから、しょうがないさ、ってまた前に進めるんだよ。

「これで良い」って選んだことは、下手すると何かのせいにしちまうんだ。

 誰かや何かのせいになんてしたくないだろう?

 少なくともアタシャしたくないねぇ。

 

 それからもう一つ。これがあればもっと格好いいねぇ。

「なんで〝これが良い〟って思ったか」その理由を考えるのさ。

 手始めに、何かがならんでいたら「その中で何が一番好きか」を考えてごらん。そして「どんなところが好きか」も考えてごらん。

 電車やバスの広告でも、教科書の写真でも、漫画のページでもいいのさ。

 アンタらはまず「選ぼう」って遊びをしてみたらいい。

 きっと色々な発見があるはずさ。

 ちっちゃな選択が出来るやつってのは、いざってときの大きな選択だって、きっと出来るのさ。