いい話だな~、こういう姿勢で仕事してる方、なんて素晴らしいんだろうと思いました。
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ドラマの現場で毎日配られる「割り本」と呼ばれる小冊子の一ページに、突如連載が始まった。タイトルはドラマ「花咲舞が黙ってない」に引っ掛けた、「銀行員は黙って仕事⁉」というものだ。横には「vol.001」とある。
「これ、三桁ってことは百回目指しているの?」
思わずキャストと顔を見合わせた。第一回はメガバンクについての説明だった。銀行の合併やネーミングについての豆知識が書いてあった。
翌日も、翌々日も連載は続いた。
B5サイズ一ページにぎっしりと文字が詰まっているので、文字数としてはこの「気分ほろほろ」の連載を毎日続けているようなものだ。
驚愕する私に、執筆している銀行担当の助監督ノセ氏は
「まぁ、調べたことをコピーしているだけの回もありますけどね」
なんてはにかむばかり。
毎日、本職の、台本の設定の裏付け、取材などに追われながらも、決して表には出ない形でスタッフやキャストを楽しませ、銀行の世界に誘ってくれる。
銀行に関する豆知識を次々と紹介してくれる中で、実際に現場で演技する際に助けられたこともあった。
・・・
連載は時に、グルメ情報になったり、歴史の話になったり、ドラマのサブストーリーまで書いてくれたこともあった。これがまた、思わず噴き出したりホロリともさせてくれるのだ!
・・・
現場では常々、この連載がまとまって本になれば良いのに、とも話していた。毎日配られる割り本は、日々消耗され処分されていく。せっかくだから、この連載をまとめて欲しいな、なんて話していた。
クランクアップの日、ノセさんは私に一冊のファイルをくれた。背表紙には「銀行員は黙って仕事⁉全集」と印刷されたラベルが貼ってあった。
開くと、ドラマのタイトルロゴの花丸マークを改造したデザインが表紙になっていた。更にページを進めると、なんと目次まで。
この、おそらく二部、あるいはせいぜい五部ほどしか発行されないであろう全集のために、ノセさんは更なる作業を費やしていたのだ。シーズン一の不定期連載もまとまった、まさに「全集」と呼ぶにふさわしいその冊子の最後には、筆者直筆のメッセージまで載っていた。
なんという手間を惜しまぬサービス精神なのだろう。
直接の利にはつながらないかもしれない。でも、この連載は、現場に携わった多くの人の心を動かした。何より私が大きな影響を受けた。全力で物事に取り組み、そして良いと思われることを、積極的に創造して実行にうつす。
「必要なものを必要なだけ」となりかねない昨今の社会の在り方や仕事の仕方に、もっともっと出来ることをしてみたい、その心を育みたい、そう思うことが出来た。
ところでこの週末、ブログをお休みします。
またすぐ再開します。
いつも見てくださって、ありがとうございます(*^-^*)