どうにかなる

放っておいても明日は来る― 就職しないで生きる9つの方法

 なんとかなる、どうにかなる、そんな生き方ばかりで、読んでいると気分が楽になります(^^)

 最後は高野さんの話が載ってました。

 

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 授業に来る人来る人が、今日のことしか考えないみたいな人ばかりで、それは面白かったんですけど、ちょっと気がかりなのは、「あの人たちはみんなすごい人たちで、自分とは最初から違うんじゃないか」ってみなさんに思われないかなということです。実際僕が聞いていても、ちょっと俺にはできんなと思ってしまうんですよね。こんなことは普通出来ないなと、ああいう話を聞いていると思ってしまうわけですよ。

 でもね、・・・もともとはそんなみなさんと変わらない学生だったと思いますよ。

 じゃあどこが違うのかというと、何かのきっかけで〝やってしまった人たち〟だろうと思うんですね。考えていると物事というのは難しく思えるんですよ。それがやると案外できちゃうということがすごく多いんですね。

 ・・・

 ・・・探検部に入ったら、・・・探検部の人間というのは外国の僻地、人の行かないところに行くべきであると思っていたんです。今ではインドなんて誰でも行っているだろうけど、当時は少なかったから、一人旅で最低インドくらいは行かなきゃダメだろうって感じで、・・・

 ・・・一カ月旅行して帰ろうというときに、カルカッタという街で、自称マレーシアとイギリスのハーフという旅行者に出会ったんです。・・・出かけようとしたら「貴重品は置いていけ」って言うんですね。・・・「カルカッタにはホールドアップの強盗が多いから、そういうときは持っていたらかえってまずいだろう。このホテルは僕も長く利用していて安心できるから」って。・・・

 ・・・最初っからそういう魂胆で、僕の貴重品はないわけですよ。マットレスを開けても何もない。僕の荷物も全部持って出かけちゃったんだって(笑)。

 そのときはすごい衝撃どころじゃなくて、一文無しになっちゃったわけですよ。・・・その前に知り合っていたインド人の小学生に助けを求めて、その子の家に転がり込んだんです。

 ・・・

 三畳一間の箱みたいな四人で満杯なところに、「いていいよ」って言うから僕も居候したわけ。そうすると不思議なもんで、その人たちすごく貧しいわけですね、でも現時点では僕が一番貧しい状況なわけだから親切にしてくれるんです。・・・

 そこでなんか僕の頭のチャンネルが変わったんですね。ていうのは貴重品は命だと言われていたわけでしょう。それさえあれば生きていけるというものがないわけですよ。取られたら死ぬと思っていたわけだけど、死んでないんですよ。当たり前ですよね、パスポートも金も航空券も人間が生きていくうえで必要じゃないから。・・・だからなくなっても死なないし、そうやって助けてくれる人もいる。そのときに「意外に生きていけるんだな」って思ったんですよね。

 ・・・

 ・・・日本大使館に行ったら君宛の書留が届いているって言われて、おかしいなと思って開けてみたらパスポートと航空券が入っていたの。盗んだ奴が親切な人で(笑)、送ってきてくれた。

 ものすごく不思議でしたね。インドは何でも売れるから、闇のルートでパスポートでも航空券でも何でも売れる。特に日本のパスポートは一番値が高いって言われていて、有名なんですよ。信用度が高いから。なのに返ってきちゃった(笑)。・・・日本領事館の職員の人もインド人の人たちもみんな驚いていた。普通、そんなことありえないって。

 その辺からして、世の中というか世界は、自分が考えていたものとは違うなと思ってきたんですね。今まで考えてきた常識的なことだけじゃなくて、非常識なことも起こりうるんだなと。・・・