プラシーボ効果

脳科学は人格を変えられるか? (文春文庫)

 

マイケル・J・フォックスさんの本を読むきっかけになったこちらの本に戻って、また何カ所か書きとめておきます。

こちらはプラシーボ効果に関して、予測や思い込みがドーパミンなどの分泌量を変えるというところです。

 

P66

 ・・・プラシーボ効果には、それほど有名でない双子のかたわれがいる。それは・・・「ノーシーボ効果」で、プラシーボのいわば影の存在だ。・・・単純に言うと、人間は自分の具合が悪くなると信じれば、ほんとうに具合が悪くなるということだ。・・・

 ・・・

 ミシガン大学アナーバー校の分子神経科学・行動神経科学科のジョン・カー・ズビエタたちは、思い込みが脳に直接的な影響を与えるというあきらかな証拠を、ある実験から見つけた。彼らは二〇人の健康な被験者を説得し、二〇分間痛みを我慢する実験に参加することを了解させた。

 一部の被験者は、「強い鎮痛薬」を与えられた。だが、実験の一週間後、その薬がじつは砂糖をかためたもので、鎮痛効果はゼロだったことが明かされた。つまり、彼らも残りの被験者も、鎮痛薬は与えられていなかったのだ。それなのに、「鎮痛薬を飲んだ」と思いこんだ人々の脳でははっきりした変化が起きていた。強力なプラシーボ効果のおかげで「痛みが減少した」と語った被験者たちの脳内には、「ハッピー・ケミカル」と呼ばれるドーパミンオピオイドが急増しているのが確認された。

 これとは対照的に、強いノーシーボ効果で被験者が「痛みが増した」と報告した事例では、ドーパミンオピオイドの減少が確認された。これは、予測や思い込みによって、脳の快楽の領域に神経化学的な変化が起きることを示した、驚くべき証拠だ。