ホセ・ムヒカさん

ホセ・ムヒカと過ごした8日間―世界でいちばん貧しい大統領が見た日本

来日したホセ・ムヒカさんのスピーチや、その間に交流した人々との対談や、ムヒカさんの言葉から著者や周囲の人々が考えたこと、などがまとめられた本です。
色々と感じることがありました。
ここは、講演の会場になった東京外語大学の教授と著者が話しているところです。

P118
―確かにムヒカさんは、人と人の関係が重要だとよく言います。特に若い人たちには、同じ考えの人と連帯しなさいと強く言っています。

宮地 かつてゲリラ活動に身を投じていたこともあり、連帯して戦うという意識は強いと思います。ただ、彼の著書や活動を見ていると「さあ、みんな立ち上がれ」と声高に叫んでいるというより、資本主義のメカニズムへの疑問、つまり「そもそも、こんなに消費と生産を繰り返していって、みなさんそれで大丈夫ですか?」とまっすぐに問いかけている側面が強いように感じます。
 ムヒカさんは貧しい人にも豊かな人にも普通に話しかけているところが、私には大変面白い。彼の伝記の中では「俺の友だちには金持ちもいる」と言っています。

―豊かな人と貧しい人との闘いといった、わかりやすい構図で動いていないのですね。

宮地 ええ。闘うべき敵を外に追いやって、連帯できる人とだけ集まって闘うという図式ではない。貧困を解決するためには、企業家など富裕層の人びととも話をする。ムヒカさんはオープンに話ができる人だと思います。だからこれほど多くの支持を集められるのではないでしょうか。

立石 ムヒカさんは旧タイプの人間ではないのです。持つ者と持たざる者に分けて、持たざる者の連帯によって人類を解放するという時代ではない。現代の複雑なメカニズムの中で、貧しい人たちが人間らしく生きるためにはどのような政治が行われるべきかを考えたとき、排除の論理を取らないのです。それがムヒカさんの政治の特徴です。

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宮地 彼の哲学は「中庸」です。貧困や人権や環境など、解決しなければいけないことはいろいろあって、原則を正面から掲げる。ただ、いろんな人と話し、弱き者の側に立ちながら大きく考えられるバランスの良さ。それが彼から学ぶことだと思います。