この本もすごいです。
P64
・・・私は厚さ五センチはあろうかという、レンガほどの重さのある岸根卓郎『宇宙の意思』(東洋経済新報社)という、とんでもない本にぶち当たりました。
本のカバーには、私の心を揺さぶるようなサブタイトルが付けられていました。
「人は、何処より来りて、何処へ去るか」
著者紹介を見ると、岸根卓郎さんは、一九二七年生まれ。京都大学農学部卒。京大では、湯川秀樹、朝永振一郎といったノーベル賞学者の師であった園正造の最後の弟子です。・・・湯川秀樹よりちょっと若い世代の、数学者です。・・・
『宇宙の意思』には、私が今まで考えてきたことの回答が全部書かれてしまっているのです。もう私は、いつ死んでもいいという気になりました。こんな重い本を読むのはこたえるなと思いながらページをめくっていくと、ぐいぐい引きずり込まれていくのです。
・・・
「生死の宇宙法則 生死のプログラム」という項にはこうあります。
「『人間は再生しつつ生きている』
ということである。つまり、
『細胞は死ぬことによって、個体としては生きている』
ということである。すなわち、
『細胞の死によって、個体の生存が保たれている』
ということである。同様の見地から、
『人間という種もまた、再生しつつ生きている』
すなわち、
『個人は死ぬことによって、種としては生きている』
<中略>
つまり、
『部分の死が、全体を保存する』」
というわけです。
・・・
岸根さんは、現代の状況を、
「人間は『物質に姿を変えた波動の世界』だけを見ており、『物質の姿をとらない波動の世界』はまったく見ていないということである。ゆえに、そのように限られた『可視の物質世界』のみを研究対象とする現代科学もまた、宇宙全体の『ほんの一部』しか見ていないということになる。そうであれば、そのような『管見』を通して、宇宙のすべてが解明できると過信する『科学万能主義』のいかに愚かで傲慢であるかを思い知らされる。」
と喝破しております。
「とすれば、われわれは可視の世界のみを対象とする現代科学の在り方を改め、これからは『可視の世界』に加え『不可視な世界』をも視野に入れ、さらには『両者の統合』についても『虚子坦懐』に学ばなければならないであろう。」
リベラルな発想です。
「『なぜ、宇宙には可視の世界(物質世界)と不可視の世界(精神世界)が存在するのか?』
また、
『それはどのような意味を持つのか?』
さらには、
『両者を統合して理解するには、どうすればよいのか?』
を、明らかにし、<中略>西洋科学によって分離遮断されてきた科学と宗教と芸術の間の深い溝を、物心一元論の見地から『究極的統合の理論』によって埋め、究極的には『可視の世界と不可視の世界の統合』に一歩なりとも近づきたいと願った……」
と書かれております。