相性の合う国で生きる

純情ヨーロッパ 呑んで、祈って、脱いでみて 西欧&北欧編

 国や文化との相性のお話。生きやすいところで生きられると、ほんとにいいですね。

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「チトセさんは、どんなご縁で海外に住むことになったんですか?」
 聞くと、チトセさんは日本で10年間、有名ブランドのバイヤーとしてバリバリ働いていたものの、生きづらさを感じて会社を辞め、アメリカ、ドイツに遊学。35歳のときにニースの指圧学校に通い、フランス指圧協会の試験に合格。ビーチで指圧の本を読んでいたときにフランス人男性と出会い、結婚。娘さんふたりにも恵まれ、幸せに暮らしているのだという。
「チトセさんは、日本の何が生きづらかったんですか?」と聞いてみる。
「会社に入って、日本のヘンな常識に縛られるのがキツかったですねぇ。私は負けず嫌いで気が強かったから、会社でまわりと違うことをすると、同調圧力が凄くて『決まりだから、そういうことしちゃダメ、言っちゃダメ』と批判されて……。たとえば、ヨーロッパはバカンスを取りますけど、日本って長い休みを取るとヒンシュクを買うじゃないですか」
 ・・・
 私が会社を辞め、旅の本を書いていることを話すと、チトセさんの目がパッと輝く。
「素晴らしいですねぇ!てるこさんにぜひ、日本のみなさんに『自分で自分を縛らずに、心のおもむくままに自由に生きればいいんだよ』ってことを伝えて頂きたいですね」
 海外在住の人に「日本のみなさんにお伝えを……」などと言われると、なんだか大層なお役目を授かったような気持ちになるけれど、実際、日本を出て幸せになった人の言葉には、説得力があった。そして、チトセさんとは反対に、母国では生きづらさを感じていた外国人が、日本に来て"水を得た魚"のように幸せに暮らしている例もある。
 たまたま生まれた国との相性が合わなくても、200近くある国の中から自分に合った土地を選び、新たな土地に移り住むことができる時代。自分に合わない場所でガマンせず、自分がラクに生きられる場所を探せばいいのだ。
 ・・・日本人が制限なく海外旅行に出られるようになったのは、1966年のこと。私たちは、いまだかつてなかった、前人未到の自由な時代を生きていると言ってもいい。
 たった一度っきりの人生。行きたいところを旅して、住みたい国に住んで、したいことをして、生きたいように生きればいい。私もようやく、心の底からそう思えるようになったひとりなのだ。