否定しない

純情ヨーロッパ 呑んで、祈って、脱いでみて 西欧&北欧編

 バカボンのパパの名言「これでいいのだ」を呪文のようにつぶやくっていいなと思いました。

P96
 日本人との間に子どもをもうけたコロンビア人のねえちゃんらと、ドイツで呑んだくれる不思議な夜。波乱万丈な人生を乗り越え、今は幸せに生きるルースと話していると、はち切れんばかりの笑顔がまぶしかった。
 ルースはバツ2でも、可愛い子どもをふたりもうけたことは決してバツではないのだから、人生にムダはひとつもないなぁと思う。自分の人生を振り返っても、18年勤めた会社を辞めたことを1ミリも後悔していないし、かといって、長く勤めたことも後悔していない。会社員時代がなければ「今の自分」は絶対いないから、今となっては、過去はすべて「経験できてよかったこと」だと思える。私もルースと同じく、あるのはただ、感謝の気持ちだけだ。
「自分の過去に感謝できるって、素晴らしいねぇ」と言うと、ルースは言う。
「だって、自分を否定したって、いいことないじゃない?私が自分を否定してたら、子どもにも伝染しちゃうもん。私が自分の人生を肯定するのは、自分自身のためだけでなく、愛する子どもたちのためでもあるのよ〜」
 分かるなぁ!私もつい自分を否定してしまうクセがあったものの、あるとき、ふっと、自分を否定することは、自分のことだけでなく、自分と関わっている人のことまで一緒におとしめてしまう行為なんじゃないか?と思い当たった。
 私が「ダメ人間」だとしたら、そんな私と、人生の貴重な時間を割いて仲良くしてくれている友だちも、自動的に「ダメ人間の友だち」になってしまう。自分の友だちは素晴らしいけれど、自分だけが「ダメ人間」なんてあり得ない。「私なんて……」という思いグセは、一見、内省的で謙虚に見えて、じつはとても傲慢で失礼な考え方だと気づいたのだ。
「これでいいのだ」
 ときおり呪文のようにつぶやく、バカボンのパパの、史上最高の名言。
 私はもう、自分を否定しない。何があっても、どんなときも。「私なんて……」と卑下して、自分をイジメるのはもうやめたのだ。苦しむ必要なんてない。今後どんな道を歩んだとしても、自分が選んだ道を「よかったこと」にしていくのが人生だと、私もようやく思えるようになってきたのだ。