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キャシー・ハッチンソンは、自分の体に閉じ込められている。
彼女は一四年前、重い脳卒中を起こして体が麻痺した。四肢麻痺患者となったキャシーは、「閉じ込め状態」にある何万もの患者と同じように、ほとんどの筋肉や身体機能をコントロールできない。一日の大半を、どうすることもできずに横たわり、絶えず介護が必要だが、頭ははっきりしている。・・・
ところが二〇一二年五月、彼女の運命は一変した。ブラウン大学の研究者たちが彼女の脳にブレインゲートという小さなチップをのせて、導線でコンピュータにつないだのである。脳からのシグナルは、コンピュータを介して機械のロボットアームに伝えられる。ただ思うだけで、キャシーは次第にアームの動きの制御を身につけ、たとえば飲み物のボトルをつかんで口まで運べるようになる。動けなくなって以来初めて、周囲の世界をいくらかコントロールできるようになったのだ。
キャシーは麻痺してしゃべることもできないので、目の動きで気持ちの高ぶりを伝える必要があった。そこで目の動きを追う装置が、それを翻訳して活字のメッセージにする。自分の体という殻のなかに何年も閉じ込められたあとで今どんな気持ちかと訊かれ、彼女は「夢のよう!」と答えた。そして、脚もコンピュータを介して脳とつながる日が来るのを心待ちにして、こう付け加えた。「脚をサポートしてくれるロボットレッグが欲しいです」脳卒中で倒れる前、彼女は料理や庭の手入れをするのが好きだった。だから「いつかまたできるようになると思っています」と言い添えている。サイバー義肢の分野が進歩している速さを考えれば、彼女が思いをかなえる日も近いかもしれない。
ところで脳波で動く「猫耳カチューシャ」というものが市販されているのを、この本で初めて知りました。
おもしろいですね〜・・・ちょっと付けてみたいかも(笑)