本の内容

脳は回復する  高次脳機能障害からの脱出 (新潮新書)

あとがきに本の内容が整理されてました。
当事者の方、その周囲に居る方、そして治療者の役に立つ、とても有意義な本だと思いました。

P259
 本書に書かれていることをざっくり整理すると、こうなる。

・其の一 脳卒中を起因とする高次脳機能障害に加え、鬱病統合失調症双極性障害PTSD離人症・解離性人格障害適応障害パニック障害などの精神疾患カテゴリーの数々の障害、そして発達障害認知症、薬物依存症などなどなどなど、とても書ききれたものではないが、これらはいずれも高次な脳機能が不全をきたすという点で、当事者がやれなくなることや、抱える苦しさに大きな共通点がある。
・其の二 こうした高次な脳機能障害の全体を示す横断的な言葉が存在しないので、本書ではそれら当事者をまとめて「脳コワさん」と定義する。
・其の三 大前提として脳コワさんはその不自由の中で、目に見えない心の激痛を抱えている。
・其の四 高次脳機能障害となった僕が回復していく過程で、その不自由さがどんなもので、その原因はどんな脳機能の問題で、どのように工夫すれば不自由に伴う苦しさを緩和することができるかを模索する。メソッドの多くは脳コワさん全体に使えるであろうと思う。
・其の五 脳コワさん当事者から、医療や支援の現場、脳コワさんの家族にお願いしたいこと。

 以上である。
 さて、執筆に当たっていくつかの脳コワさん関連の本を読み漁る中で、少々目から鱗の体験をした。多くの脳コワさんに有効な支援メソッドが、そして僕の書いた苦しさの緩和や環境調整に共通するメソッドが、すでに「出尽くしている」に近い分野があるのだ。
 それが、発達障害の支援メソッドである。
 少なくとも高次脳機能障害に有効な環境調整のアイディアは、ほぼ全て発達障害の当事者支援の中で定着しているものばかりに感じた。恐らくそれは、その他の多くの脳コワさんにも役立つメソッドの蓄積だろう。・・・にもかかわらず、現状で高次脳機能障害の支援でも、鬱病を初めとする精神科領域でも、発達障害支援のメソッドを引用しようといった目立った動きはないように感じた。
 ・・・
 ・・・本書ではあくまで僕自身の闘病体験をレンズにして脳コワさんの不自由を見つめてみたが、あらゆる脳コワさんの当事者や家族、そして支援現場の人々には、発達障害の環境調整メソッドから、学びを得てほしいと思う。・・・