タマネギのひみつ。

タマネギのひみつ。黒柳さんに聞いた徹子さんのこと (祥伝社黄金文庫)

 徹子さんの話、すごーく面白かったです。

 糸井さんも「いつまでも聞いていたい」と言ってましたが、ほんとにそうでした。

 

P200

この本を読んでいると、あらためて、

「ほぼ日」に来ていただいたときのことを思いだします。

「徹子さんがおいでになるのだから」と、

大工仕事や照明仕事の好きなスタッフが、

ずいぶん前からいそいそと準備をはじめていました。

 ・・・

なんなのだろう、あの、みんなの楽しみぶりは。

「ほぼ日」には、いわゆる有名な方だとか、

麗しい方が訪れてくださることもあります。

そういうときと、また少しちがう働きぶりって

どういうことなんだろうと考えたんです。

ぼくは、「偽・徹子の部屋」を構想した偽大工さんに

そのことについて質問しました。

「なんで、そんなにやる気出してるの?」

「ああ、そういえばそうですねー。

……たぶん、なんですけど、

徹子さんに似合ってほしいっていうのは

もちろんなんですけどね、

もうひとつは、ここに座られたときに、

『まぁ!』とか『なんなんでしょう、これは!』とか、

反応してもらえるような気がするんですよね」

その直感は当たりました。

まずは、不覚にもぼくが反応しちゃった。

「偽・徹子の部屋」に入ったとたんに、

「自分の会社なのに、あがっちゃう」と言ってます。

そして、風に乗ってやってきた天使みたいな

黒柳さんも、ちゃーんとびっくりしてくれました。

「ほんっと!こんなにすごいって、

わたしも、びっくりしました。

写真のスタジオかと思いました」

これこれ、きっと我が社の偽大工さんやら、

臨時フラワーデザイナーさんたちは、

こういうひと言がもらいたかったんですよ。

黒柳徹子さんなら、なにか感じてくれる。

そして、それに反応して新しい興味に結びつけてくれる。

みんな、そのことに期待しちゃっているんですね。

・・・

この人が「どういう顔をするんだろう」とか、

「なんて言うんだろう」とか知りたくてしょうがない。

「わぁ」とか「まぁ」とかの声が発せられるのを、

みんな、心待ちにしているんです、きっと。

・・・

どうしてか?

・・・

それは、ほんとに「わぁ」とか「まぁ」とか言うからです。

ほんとに「わぁ」は、ほんとに貴重なのです。

たまにほんとに、なら、あります。

でも、どなたがやってきても、何人がきても、

ほんとに「わぁ」と反応できる人は、そうそうはいません。

・・・

徹子さんの「わぁ」だの「まぁ」だのは、

もうね、あらゆる龍の画に瞳を入れる一筆みたいなもの

……なんだと思うんですよ。

で、その黒柳徹子さんに、

ゲストの席に座ってもらったのが、このときの企画です。

読んでもらった方には、わかると思うのですが、

黒柳さんには、「おもしろいこと」を

語っているつもりがないみたいでした。

笑わせる必要も、ウケるつもりもないのかもしれない。

その場でたのしくおしゃべりがしたいだけ、

というふうに、ぼくの目には映りました。

でも、ぼくも、その場にいた「ほぼ日」のみんなも、

好奇心満々に首をつき出したり、息が苦しいほど笑ったり、

真剣にこころに刻んだり、大忙しでした。

いま、あらためて文字になった「おしゃべり」を

読み返してみると、黒柳さんご自身は、

いつもの聞き役のときと同じように、

「わぁ」だったり「まぁ」だったり感じた事実を、

そのまま、ぼくらにおすそ分けしていたのですね。

・・・

黒柳徹子さんは、笑わせていたというよりは、

「びっくりするでしょう?」と、

かつてじぶんが「わぁ」と言った世界を、

指先で示して再訪問していたということなのかもしれない。

なんでしょう、つまりは、「おもしろ案内人」ということ?

そうなのかもしれませんね。

とても真剣に見ている世界もあるし、

ただただやさしい気持ちで接している世界もあるけれど、

それが、好奇心とじょうずに混ぜられているから、

案内されたほうも、お説教をされているようには思わない。

ほんとうのこととして「わぁ」と言う人が、

悲しみとともに「わぁ」と言うときもあるし、

やさしい「わぁ」を呼吸することもある

……そういうことなのかな。

そんなことを考えているうちに、

「好奇心」というものが、

よく言われる下世話なものというよりも、

もっと「尊い」もののように感じられてきました。

「わぁ」の向こうにある世界に、

さらに視線を向けるのが「好奇心」だとしたら、

おもしろいことも、いいことも、

そこからはじまるんじゃないか、と思えたんです。

そっか。

黒柳徹子さんの、尊い好奇心」。

この手紙のタイトルを、そうつけよう。