自分をえらんで生まれてきたよ

自分をえらんで生まれてきたよ

 

「ぼくが病気で生まれたのは、ずっとずっと、幸せになるためだよ」「喘息になるのは、決めてきた。だって、治すのが、おもしろいからね。ママ、ごめんね」など、いのちとか、人生とか、この世について、いろいろ思いがめぐる言葉があふれていました。

 

P14

 生まれる前の赤ちゃんは、

 心の目で見る地球を守っている。

 生まれるときは、

 まだ生まれない赤ちゃんに、お願いするんだ。

「心の目で見る地球を守ってね」って。

 生まれたら、体の目で見る地球を守るんだよ。

 

P39

 赤ちゃんは、どのお母さんにするか、

 どんな体にするか、どんな性格になるか、

 自分で決めて生まれてくるのが、ふつうだよ。

 ぼくが病気で生まれたのは、

 病気で生まれる子や、お母さんたちを、励ますためだ。

 だから、ママは、

 ぼくの言葉を、みんなに教えていい。

 

 ぼくは病気だったから、

 幸せなんだ。

 ぼくは、病気だったから、

 心の言葉が話せるんだ。

 だから、いつか、心の幸せを配る

 サンタさんになるんだ。

 

 病気になる理由は、人によってそれぞれ。

 でも、ぼくのいまいえる言葉は、

 病気は、体を、じょうぶにするためにある、ということ。

 病気をすると、新しいことが入って、古いものは飛んでいく。

 あまり悪い病気だと、治療がたいへんかもしれないけど、

 大きなことを学んでいるのだと思う。

 

 ぼくは、自分が大好きだ。

 自分の体が、大好きだ。

 自分の体、ありがとう。

 

P42

 理生は、結婚三年目に授かった子どもです。・・・

 妊娠したら健康な赤ちゃんが生まれ、すくすく育つと信じていました。ところが、妊娠二八週を過ぎたころ、おなかの赤ちゃんに不整脈が始まったのです。・・・

 三四週、すさまじい腰痛で受診したところ、赤ちゃんの心拍が二四〇を超えていたため、緊急帝王切開になりました。

 手術前、夫はおなかの赤ちゃんに向かって、

「どんな病気でも、ぼくは一生きみを守るからね。安心して、生まれてきてね」

 と、涙ぐみながら語りかけました。

 ・・・

 理生は生まれてすぐ電気ショック療法や薬の投与を受けましたが、脈は速くなったり遅くなったり、乱れ打ちのままでした。

 肺が未熟で呼吸状態が不安定だったので、酸素療法も始まりました。・・・

 NICU(新生児集中治療室)には約三か月入院していましたが、その間わたしも体調が悪く、面会にはあまり行けませんでした。

 退院後、理生はパパやおばあちゃんには笑いかけるのに、わたしとは目を合わせようとしませんでした。

 あるとき、たまらなくなったわたしは、

「理生くんは、入院が長かったから、ママに見捨てられたと思っているんだ。だからママが嫌いなんだ。でも、ママだって理生くんに会いたかったんだ」

 といって、理生をだっこしたまま、声をあげて泣きました。

 理生はびっくりした顔をしてわたしを見つめ、それからは目を合わせて笑ってくれるようになりました。

 

P96

 理生は小さいころから、ちょっぴりふしぎな子でした。言葉が出る前は、「りお語」でオペラのように歌ってばかりいました。・・・

 三歳すぎてやっと二語文が出ると、理生は言葉で、この世の美しさを教えてくれました。

 ・・・

 四歳になると、理生の「ふしぎな話」が始まりました。

 英語番組に夢中になっていたので「英語が好きね」と話しかけたら、

「ぼくはここに来る前、お空の上にいたよ。アメリカもここも、同じお空でしょ」

 といったのが「生まれる前のお話」の始まりです。

 ヘルニア手術のため入院したときは、「明日、手術よ」といったところ、

「知っているよ。神さまが『病院に行ったほうがいい』って、教えてくれたから」

 と、平然としていました。それがたぶん、初めての「神さまの話」です。

 このころ、理生には「げげ」という見えない友だちができました。

「げげ」とは、七歳で「げげランドが壊されちゃった」というまで、毎日のように遊んでいたようです。

 理生は、わたしの心を読むこともありました。

 四歳のとき、わたしが「新しいおもちゃを出してあげようかな」と思ったとたん、理生は「そうだ、今日はあれで遊ぼう」といって、確信に満ちた足どりで、それまで開けたことのない押入れに向かいました。そしていろいろ詰めこまれた物の中から、正確にそのおもちゃを取り出して、遊びはじめたのです。

 いちばんびっくりしたのは、六歳の誕生祝いに、『ロボット・カミイ』という絵本を買ったときのことです。

 わたしがひとりで購入し、実家の押入れに隠して自宅に帰ると、理生は、

「ママ、おかえり。『ロボット・カミイ』をちょうだい。ばばのおうちの押入れにあるから」

 と、いいました。

 理生のいうように、母子は「にじいろのひも」で結ばれているのかしらと、楽しい気持ちになります。