夫婦のかたち

人生は七転び八起き

 お互いへの思いやりがすばらしいなぁと思いました。

 

P119

 取材で夫婦のつながり方の質問を受けることがありますが、そこが根本的に世間様と異なっているところで、ここ二十数年、私は台所に入って料理をしたことがありません。でも、夫婦の調和を図るにあたってこれもありかもねと思っています。

 マネージャーである亭主は、もともとは私のファン。はじめて会ったのは私が64歳のときのことで、主人はアメリカにある日系航空会社の傍系企業に勤めるビジネスマンで、当時40歳でした。出会ってからというもの、彼から毎日のように手紙が届くようになり、日本へ出張にきたときにはデートをするようになりました。エアメールは1年間で300通にもなり、ついには、プロポーズの手紙が届きました。そして、主人は日本で就職先を探して、帰国。平成3年から、私と一つ屋根の下で暮らし始め、現在に至っています。一緒に暮らし始めてからしばらくは、私も仕事をしながら家事をしていました。亭主のお給料から生活費をもらい、それで家計をやりくりしていました。いまでも、家計に関しての流れは変わりません。同居を始めて2年目、彼はそれまで勤めていた会社を辞めて、私の所属事務所であるマセキ芸能社に所属して、私の専属マネージャーとなりました。やがて、「私は仕事をする人」「彼は家事をする人」という分担が決まり、以来、「師匠の健康管理までが私の仕事です」との仰せなので、家事全般を任せています。主人は料理人ではないので、ごくありふれた食事しか作れませんが、おいしくて栄養のあるものを私に食べさせたいという気持ちが伝わってきます。

 朝早くに趣味の「玉転がし(ゴルフ)」に行くときも、私の朝ごはんを用意してから出かけます。もちろん、いなくても感謝の気持ちを込めて「いただきます」と「ごちそうさま」をきちんと言います。

 掃除も彼の担当で、「ここに埃が積もっているな」なんて気がつくこともありますが、目をつぶることにしています。

 せっかく一緒に暮らしているんだから、小言を言うより、楽しい話をしたほうがいいですからね。それに、数日後に見てみると、きれいになっているので、「言わないでよかった」と思うのです。

 ・・・

 夫婦はもともと赤の他人です。

 生まれも育ちも違う者同士が一緒に暮らしているのですから、自分たちでうまくやる努力をしなきゃいけません。惚れて惚れられて一緒になったとしても、長年夫婦をやっていれば腹の立つこともあります。

 色恋なんて、何年かすれば冷めてしまうものです。そのあとは、お互いの了見が大事で、この了見の持ち方で人間の度量が決まります。

 文句を言うのも、けんかするのも、夫婦なら当たり前です。

 ・・・

 ・・・相手に関心があるから文句の一つも言いたくなるわけで、「けんかするほど仲がいい」というのは、ほんとうです。怒鳴り合うなんてことは、わかり合っているからできることですから、腹が立ったときには、自分の意見を最後まで言ったほうがいいんです。互いに腹に一物持ったままじゃ暮らせませんからね。勘違いしてほしくないのは、けんかは、要は話し合いだということです。口げんかならいいけれど、ののしり合いになったらいけません。この違いがわかっていないと、こじれます。

 ・・・

 最近では、亭主と手をつないで歩くことが当たり前になりました。・・・私の亭主は24歳も年下ですから、手をつないでいると、介護されているように見えるのではという気がかりがありました。でも、いまは全然気にならないし、手をつなぐと、話をしなくても、いろいろなことが通じる気がして、心が温かくなります。・・・