サウスウエスト航空の奇跡

社員第一、顧客第二主義―サウスウエスト航空の奇跡

 向井万起男さんのエッセイで、サウスウエスト航空のことを知って、読んでみたくなりました。

 20年ちょっと前の本です。

 こんな素晴らしい航空会社があることを今まで知らなかったので、びっくりでした。

 

P12

 東京を発つ前に持っていた同社に関する私の予備知識といえば、〝スチュワーデスのユニフォームが変わっているらしい〟とか〝食事のサービスはしないらしい〟という程度のものでしかなかった。・・・話を聞いてまず驚いたのは、自分が思っていたよりも会社の規模がはるかに大きいということであった。例えば、社員数や所有機材数などは日本航空よりも大きいのである。恥ずかしながら、実をいうと、社員数500~600人程度の小さな会社がユニークなサービスを展開しているのだろうというくらいのイメージしか抱いていなかったのである。同社はあらゆるコストパフォーマンスを考慮して、全機材をボーイング737型の一機種だけに統一しているという。そして、過去に25年間連続して黒字を計上しているということも、大きなインパクトであった。さらに創立以来一度も人身事故を起こしていないのみならず、1992年から96年までの5年間連続して、米国運輸省から次の3部門において最優秀賞を与えられている。・・・

一、お客様からの苦情が一番少ない

二、手荷物の取扱いが正確

三、定時性の確保

 ・・・

 この会社のロゴマークはハートである。ハートマークすなわち〝愛〟を表している。したがって、自分たちの会社のことを〝ラヴ・エアラインズ〟という愛称で呼んでいる。・・・飛行機の胴体にも大きなハートマークが描かれている。

 同社のいう〝愛〟には大きく分けて2つの意味が存在するらしい。

 ひとつは、お客様や地域住民に対する愛であり、もうひとつは社員に対する愛である。

 同社のポリシーのひとつに「社員第一、顧客第二」というのがあると聞く。・・・

 ・・・「社員第一、顧客第二」と言われると、一瞬「ウン?」となる。しかし、ちょっとばかり考えてみると〝なるほどそのとおりだ。そうでなくてはならない〟というように納得がいく。・・・会社の経営陣が心底から社員を愛し、社員を信じて社員が楽しく働ける会社にしたいと思い、その社員を大切にしてくれているという気持ちが社員に伝われば、社員がどのような気持ちでお客様に接するかは、あらためて説明するまでもない。・・・

 説明にあたってくれた・・・ふたりが異口同音に語った。「驚くことに私たちが会ったあの会社の社員のだれもが〝自分の仕事が大好き、この会社で働けることを誇りに思っている〟ってことを言うんですよ」と。コストをできるだけ抑えて、他社の半額以下の運賃で飛ばしているのだから、社員の給料もそう高くないはずだ。それなのに社員が嬉々として働いているのだという。話を聞いてその点に大いに関心を抱いた。

 ・・・

 最初のセントルイス~ヒューストン間でサービスも一段落した頃、私は後部ギャレーに出向き、そこにいた3人のスチュワーデスたちとおしゃべりをしながら情報収集にあたった。・・・

 ・・・彼女たち3人が異口同音に、そして熱っぽく私に訴えたことがある。それは「本社に行ったらぜひハーブに会うべきよ」ということであった。

 ハーブとは同社の最高経営責任者(CEO)であり、会長兼社長のハーブ・ケレハー氏のことである。・・・

「絶対にハーブに会うべきよ。彼は本当に素晴らしくて、面白くて、チャーミングな人なんだから」

 ・・・

サウスウエスト航空で働けることをすごく誇りに思っているの。そりゃあ、仕事は非常に厳しいけど、この会社はとても暖かい会社なのよ。だから他の会社で働くなんてことはもう考えられない」

「そう、この会社では社員がすべて家族みたいに感じるの。職種に関係なく、仲良くてお互いに助け合うのよ」