ユーモアセンス+?

社員第一、顧客第二主義―サウスウエスト航空の奇跡

 読めば読むほど、すごいなぁ・・・と。

 著者が本社に向かうために乗ったタクシーでは、運転手さんが「サウスウエスト航空って会社は、世界一の会社だよ。あの会社で働いている者すべてが、それぞれの仕事を愛し、自分たちの会社のことを心から愛しているのが、彼らと話しているとよくわかるからね。それに何たって、ハーブ(社長)が素晴らしいよ。・・・」と自分が働いているかのように熱っぽく語ったそうです。

 

P29

 ケレハー社長の経営哲学の中で、ユーモアの占める位置というか比重は非常に大きい。

 ・・・

「空の旅は思いきり面白くなくては!」というのが彼の口癖だ。「人生は短く、辛く、深刻なんだから楽しまなければね」

 サウスウエスト航空は面白いということに重点を置いている。従業員を採用する時も、この考え方が基本になる。パイロットだって例外ではない。どんなに技術が優れていても、ユーモアセンスを有しない人は、同社のパイロットとしては不適確なのだ。「ユーモアセンスのある人は、変化にも素早く対応できるし、プレッシャーの中で面白いことを考え出すこともできる。ユーモアがなければ、仕事を効率的に処理することも、遊びに熱中することも、健康を維持することもできないのだ」と。

 ・・・

 もちろん、客室乗務員にはユーモアのセンスさえあればよいというのでは決してない。

「客室乗務員として、どのようなパーソナリティが好ましいとお考えですか?」という私の問いに対して、ラードン氏は「ユーモアのセンスがあり、面白い人を重要視しますが、それだけでは不十分です。その他には、まず何といっても知性のある人ということです。そして、客室乗務員は1日に何百人という数多くのお客様と接するのですから、〝人のお世話をするのが好きであるということ〟とか〝マニュアルに縛られることなく臨機応変な対応ができる〟というような点も非常に大切です。また、わが社の社員になる人は個性的であることも重要なファクターです。わが社には、いわゆる<サウスウエスト航空スピリッツ(精神)>と言われているものがありますが、そのスピリッツを理解する人か否かが採用の際の判断の重要な材料になります。それらは次のような人であるかどうかです。

一、遊び心のある人

一、ユーモアセンスがあり、面白い人

一、型にはまらない人(人と異なった何かを持っている人)

一、冗談が得意な人

一、まじめすぎない人

 簡単にいうと以上がサウスウエスト航空スピリッツを理解する人ということになりますかね」

 ・・・

 ・・・

 ・・・ラードン氏のケレハー社長に対する称賛は続く。

 ・・・

「スチュワーデスのひとりからうかがいましたが、ケレハー社長は非常に気配りをする人だということですね」

「ええ、そのとおりです。・・・

 例えば、こんなことがありました。空港のゲートで働く社員から〝床が固いタイル張りなので、一日中立って仕事をしているとキツイ〟という不満が出てきているという声を耳にしたハーブは、すぐに自分でウォルマート(スーパーマーケット)に出かけていき、ゴムの敷物を購入してきたのです。・・・〝このくらいのことで社員がやる気を失わずにすむのであれば、おやすいご用だ〟と言っていました。・・・

 ・・・

「・・・ある日、ひとりの社員が次のように語っているのが、ある雑誌に出ていたのですが、・・・

『この世の中に、日曜日の午前3時に、清掃係たちの休憩室にやってきて、ドーナツを配ったあとに、カバーオール(つなぎの作業着)に着替え、私たちと一緒に飛行機の客室を掃除するのを手伝う最高経営責任者が何人いると思いますか?私たちの社長はそうします』

 ・・・

 ・・・

 仕事が三度の飯より好きなんだろうと言ってしまえばそれまでですが、それ以上に、社員を愛する気持ちがよほど強いんだと思いますよ。心底から〝社員第一〟だと思っているんだと思います。そのような気持ちを行動で証明するので、多くの社員の心をつかむことができるのでしょう。彼の偉いところは、この他に、普段の生活が非常に質素だということです。・・・」