コーチングを丁寧に解説している本でした。著者の白井一幸さんは元日本ハムファイターズの選手で、引退後は監督もコーチも経験されています。今から33年前、現役の頃にメンタルコーチについて、成績を伸ばしたそうで、その経験から、現役引退後により深く学んだということでした。
神コーチと鬼コーチ(旧タイプ)の対話という形でわかりやすく進みます。
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神 ・・・目標達成意欲を高めるためには、指導者はどんな質問をすればいいでしょうか。鈴木さんは…そうですね、指導者です。私は陸上の金メダリスト候補の選手だと仮定して、質問してみてください。
鬼 白井さん、私はもう1年もあなたから学んできたんだ。この質問はちょっと簡単すぎないか?じゃあ、いくぞ。
「白井くん、君には力がある。必ず金メダルを取れるから頑張れよ。金メダルを取るには、どんな練習が必要だろうか?」
神 はい、走り込みです。
鬼 そうだな、食事はどうだろう?
神 栄養バランスに気をつけます。
鬼 お酒はどうする?
神 金メダルを取るまでは、我慢します!
鬼 そうだよな。好きなお酒を我慢するのも、世界一のためだ。睡眠時間はどうだろう。
神 しっかり確保します。
鬼 そうだね。夜更かしはダメだぞ。つらいかもしれないが、金メダルを取るためには犠牲にしないといけないものがあるんだ。頑張れよ。
神 はい、ありがとうございます。
鬼 ……どうだった?
神 残念ながら、ちっともモチベーションが上がりませんでした(笑)。
鬼 うーん、なぜだ?しっかりゴールに向かって質問したぞ。
神 意欲を高める質問は意外に難しいんです。ゴールに向けた質問でも、やりすぎると達成意欲が下がってしまう。
鬼 じゃあどうすればいいんだ?今度は白井さんがやってみてくれよ。攻守交代だ。
神 分かりました。「鈴木君、金メダルを取ったら、ご両親はどう思うだろう?」
鬼 喜んでくれると思います。
神 地元でのパレードも楽しみだな。友達や恩師なんかも、喜んでくれるんじゃないか?
鬼 そうですね。ワクワクします。
神 これです。分かりますか?ゴールに向かって質問すると、労力を払わないといけないと気づくので、苦しくなってしまうんです。
でも、ゴールに到達したときにどんな価値が生まれるのか、これを「価値質問」といいます。価値質問をすると、意欲が高まる。この価値質問は、目的質問とも言い換えられます。
頑張るのは当たり前なのですが、頑張った先に何があるのか。何を得られるのか。ここに焦点を合わせると、意欲は高まります。人間は基本的に、自分に価値があると感じたことしか頑張らないものです。
だから、個人の価値につなげる作業が大切なんです。・・・