社会を見る眼

養老孟司・太田光 人生の疑問に答えます (新潮文庫)

 何か印象に残ったところです。

 

P181

養老 ・・・僕の根本的な考えは、大げさにいえば自分なりに世界を理解したいということなんです。虫の世界で見ていることと世の中について言っていることがいつも両方の筋が通るようにと自分の頭の中で整理している。それを絶えずやっているので、頭の中が忙しい。・・・

 

太田 恐らく養老さんも毎日発見があるんだと思うんですよ。

 

養老 そうですよ。

 

太田「えっ、これはこういうことなんだ」と思うことがあると本当に楽しいですよ。僕も漫才を17年やっていて全然上達しないんですけど、ただ発見はありますね。

 

養老 それがいちばん楽しい。そういうことって、完全に無意識な動機で動いているんですね。言い方を変えると、駆り立てられちゃうわけだね。僕の場合は、虫を見たくてしょうがないんです。見たら世界がわかると思っているんだ。そして、またわかったら次に行くと。あるレベルまでくるとやっていることは全部発見なんです。

 ・・・

 老眼になってだんだん眼が悪くなってくるけれど、世界がぴーっと見えてくるわけですから、ある意味、眼はよくなってくる。そういう風にやっていると、実際に眼が悪くなった分だけ、社会を見る眼がよくなるんですよ。