なんとか生きてますッ

なんとか生きてますッ

 前に読んだ「生きるコント」も面白く、お酒飲んで記憶失くしすぎでしょ!と、驚きつつ、私もいっぱいやらかしてるけど、ここまでじゃないかもとほっとするような、ほっとしていいのかわからないような(笑)内容でしたが、こちらも同様、笑いながら読めて、とても心強くなる内容でした(^^)

 そして、すごい才能だな~と思いました。

 

P226

 私はいつも原稿の提出が遅いため、担当編集者が編集長という、申し訳ないことになってしまっている。ただ、いつも提出するたびに、編集長がくれる感想を読むのが好きだ。励みになっている。

 思い返せば、この連載が始まる時にご挨拶をし、対談もした。そして飲みに行かせてもらった。その時、編集長の新聞記者時代の熱い話や、人間らしいダメ~な話を聞いて、これから一緒に毎週やりとりしていくのが楽しみになったし、最初に読む読者が編集長なので、編集長が毎週読むのを楽しみにするようなものにしたいなぁ、喜ばせたいなぁ、と思ったのを覚えている。

 もちろん編集長に対してというよりも、読者の皆さんに対して心を込めて書いている。皆さんがこれを読んで、「こいつもヘマをしたり、ドジをしたりしながら、それでも頑張ってやってるんだなぁ、俺も頑張ろう」って思ったり、「この人不器用だなぁ、確かに、〝なんとか生きてますッ〟って感じだなぁ。私の方がましね、なんだか気が楽になっちゃった」って思ってくれたらいいなぁ、と思って書いている。自分に起こった災難やら不思議な出来事、温かい気持ちになった出来事、日々いろいろである。それらが、誰かの傷ついた心を癒したり、笑うことで元気になったりしてくれたらいいなぁ、と。でも同時に、これ誰か読んでくれているのかな?と心配になったりもする。

 ・・・

 今回、書籍化ということで、この「サンデー毎日」の編集長と、書籍のほうの担当さんと三人での打ち合わせとなった。

 ・・・

「さあ、どれを選ぶか?」

 そう腕まくりしたのは編集長である。

 ・・・

「俺はやっぱり、おかんネタだなぁ。部屋のノブというノブに、エリーのパンツ干しちゃうやつとか」

「私は、結婚できないっていう話とか、就職の話も入れたいですねぇ。三十三社落ちたやつ、あれ、励みになりますよねぇ。大学受験に失敗したのもいいですよねぇ」

 どうやら担当女性は人の失敗が大好物らしい……望むところだ。

 それぞれの観点であり、想定している読者が違うのに、二人が重なるネタがある。

「俺、やっぱりさ、酔っぱらいのは入れたいよね。記憶がないってやつとか」

「私もそれは外せないと思います。泥酔の章をつくりましょうかね?」

 ・・・

「エリーもまだ独身だし。少し、控えておこうか」

 ・・・

「でもさ、あの断食した話、面白いから入れようよ。あの宿便が出たやつね、どかんと」

「……」

 年ごろの女性が、結婚したい女性が、一番本に載せちゃいけないやつでしょ。

 ・・・

「反響がすごくあってね。宿便の回。私も、俺もやってみたい、と。その先生教えて、とか、すごく問い合わせがあったよ」

「……」

 すると担当女性がこう言った。

「あの酔っぱらいの回も反響あったんですよね?どうやったら記憶がなくならないか教えてっていうやつ。ねっ?編集長」

「そうそう。エリーが店中の知らない人の膝に乗って回ったっていうやつね。・・・」

 ・・・

「いい本にしましょうね。残るものだから」

「そう!いい本にしましょうね。エリーさん」

 でも私には、「いい本にしましょうね」が、「恥ずかしい本にしましょうね!結婚できないような!」に聞こえたのだった。