融通性

ブリッランテな日々

 いい加減なのも困りますが、融通が利くのはありがたい、バランスが問題ですね(;^_^A

 

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 イタリアは実に緩やかな規則で包まれている。それをいい加減と見るか、融通が利くと見るか、どんな側面を見るかによって、イタリアの顔は変幻自在となる。僕はそのあたりの、日本では絶対に考えられない、あり得ない世界が存在することを驚くと同時に、その恩恵をたくさん受けました。・・・

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 イタリアで生活する外国人は、必ず警察で滞在許可を申請しなくてはなりません。普通は年に一度の申請ですが、僕はイタリア人女性と結婚しているので、2年に一度の更新手続きです。

 ある年、申請書を警察に提出して門を出ると、一人の警察官が追いかけて来て僕を呼び止めました。「あなた、日本人だよね。ちょっとこっちに来て」と、なんだか嫌な雰囲気。

 すると思いがけないことに、「お願いがあるんだけれど。自分はフィギュアをコレクションしている。どうしても欲しいものがあるのだけれども、どうやっても見つからない。日本にはきっとあると思うので買って来てくれないか」と、彼は笑顔でお・ね・が・い、と頼み込んで来る。お互いに顔も名前も知らないのに、イタリアでは信じられないような話があるものだ。

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 1週間後に滞在許可証を取りに行くと、奇妙なことにいつもの許可証の色と違う。白だったのが薄いピンク色になっていて、よく見ると「永住許可」と書かれている。許可証を発行してくれた例のフィギュアの警察官は、「あなたのほうが私より長くこの街に住んでいて、永住権は十分にあると思いました。裁判所等で調べさせていただいたところ、何も問題がなかったので、永住許可に切り替えておきましたよ。そのほうが便利でしょう?」と笑顔。フィギュアが取り持つささやかな縁から、こんなに大きなプレゼントをいただいてしまいました。