わかりにくい恩人

ダメをみがく―“女子”の呪いを解く方法

「わかりやすい恩人より、わかりにくい恩人のほうが大事だと思う」たしかに…と思いました。

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津村 ・・・最初の職場が合わなかったことでものすごい落ち込んでて。ハローワークの最初のほうの講習で、「若い人には就職カウンセリングもあるよ」って言われて行ってみて、テストをしたあと、そのおばちゃんと小部屋でしゃべって。今までどんなことがあったとか話したんです。Mさんという人でした。一回しか会ったことないけど、名字覚えてます。最初の会社のことでものすごく自信を失ってたから、「私にはそもそも仕事ってものができるんでしょうか?」みたいな状態で。つらつらしゃべってたらMさんがだいぶ心配になったみたいで、「テストの結果見たら、職業能力が低いわけじゃないし、仕事は全然普通にできはるよ」って優しく言ってくれたんですけど、私は「そんなことないと思います。もう無理な気がします」ってぼそぼそ応えて。
 カウンセリングは一回だけのきまりだったんですけど、帰るときにMさんが「私は火曜日と木曜日にここにおるから、なんかあったらおいで」って言ってくれて。Mさんに会ったことですっごい救われましたね。

深澤 いい話だなあ。

津村 単にそれが仕事なんかもしれんけど、気にかけてくれはった!って。・・・
・・・
深澤 恩人って、「わかりやすい恩人」よりも、今のMさんみたいな「わかりにくい恩人」のほうが大事だと思う。

津村 そうそう。工場で世話してくれたおばちゃんやおっちゃんとかも、愚痴を聞いてくれたとかですらないけど、全然責めないし、放っといてくれる。干渉してこようとしないけど傍にいてくれる人ってすごい大事。
 ・・・
 ・・・二つめの会社では、近くのコンビニに毎日行ってたんですけど、そこで7年ぐらい、同じ店員さんに世話してもらってて。・・・何年も通い続けてたら、おまけのキャンペーンで「いる?」ってドラえもんのクリアファイルくれたりとか。

深澤 いいなあ(笑)。

津村 何年もの間、ずーっと働いてた人が二人いはって。30代と40代ぐらいの女性二人。私は人なつこい客でもなかったんですが、何年も通ってるうちに、まあ天気の話ぐらいはするようになって。でも、いろいろ談笑する感じではなかったです。ただ、どんだけ仕事がうまくいかん日にも、その人らがいつもと変わらずてきぱきレジやったり、お弁当温めてくれたりすることに、なんかほっとしてた。それで、会社辞めることになったときに、年上に見える人のほうに「今日で辞めるんですよぉ」って言ったら「えぇ〜!!!」って驚かれて。

深澤 コンビニで?なんかすごくいい話じゃないですか。ちょっと今泣きそうになった(笑)。

津村 いい話でしょ?しかも「あの子も昨日、突然辞めるって言って辞めてん」って。

深澤 えっ!もうひとりのほうが辞めたの?

津村 そうです。で、年上に見えるほうの人が「なんか、そういう時期なんかなあ。あかん、ちょっと泣いてもうたー」って。私も泣きそうになりました。