臨死体験

看取るあなたへ

プロフェッショナルにも出演されてた医師の川越厚さんのお迎え体験が載っていました。

P206
 二〇一二年一一月、私は三井記念病院で二度目の冠動脈ステント挿入手術を受けた。手術自体は非常に順調だったが、回復室のベッドに横たわっていた時、突然軽い嘔気と共に吸い込まれるような強い眠気におそわれ、そのまま意識を失った。
 どのくらいの時間が経過したのだろうか、ベッドを囲むようにして、壁や天井の方から無言でじっと私を見ている大勢の人がいることに気付いた。しかし声を出そうと思っても、声にならない。そのうち彼らは姿を消し、私はぼんやりと意識を取り戻した。誰かがせわしく、私の胸のあたりを押している。
「何をしているの?」
 胸を強く押していたのは、ベッドの上に乗って心臓マッサージを続けていた看護師だった。私の問いに、彼女は大きな声で叫んだ。
「先生、意識が戻りました!」
 気が付くと、ベッドと私の背中の間に固い板が挿入されている。だがいつ、誰がその板を挿入したのかは全く記憶にない。これはあとでわかったことだが、回復室で致死性の不整脈が発生し、突然心拍動が停止したのだった。これが私の経験した"お迎え"の顛末である。
 この体験を通して、私は二つの大切なことを学んだ。それは、人は死ぬ時、恐れるような苦しみを経験しないこと。もう一つは、"送り人がいるように迎え人もいるらしい"との気づきだった。


こちらはターミナルという言葉の意味、初めて知りました。

P140
 ターミナルケアという言葉があります。このターミナル(terminal)という言葉はラテン語のテルミヌス(terminus)という言葉から生まれたもので境界という意味です。語源的にはターミナルは終わりとか末期とか終末とかいう意味ではなくて境界という意味なのです。この世の終わり、そしてそれ以降に始まる死後の世界、その境目をケアするのがターミナルケアなのです。