岡本太郎さん

恋愛について、話しました。

10年位前に出た、岡本敏子さんとよしもとばななさんの対談本を読みました。
タイトルにある恋愛についての話を読んだような気はしない?
人間についての話というか、このお二人のユニークさに触れたというか、そんな感じでした。

こちらは岡本太郎さんの話。こういう生き方だったのかぁと驚くような納得するような。
P49
岡本 ・・・岡本太郎こそ両性具有ですよ。

よしもと それもすごくわかる気がします。

―生活の中でもそんな感じでした?両性具有的な。

岡本 生活の中では男の子であるだけで、そんなに複雑なことはないの。無邪気だし。

―苦悩というものを内面化するようなキャラクターではなかった。

岡本 そうではないんです。パリにいるときにさんざん悩んだらしいからね。あるとき決心して、自分を守らない、マイナスの方にかけると決めたの。それで岡本太郎になったの。

よしもと なったんですね、やっぱり。

岡本 昔から岡本太郎だったんじゃないの。岡本太郎は自分でつくったし、岡本太郎になったの。それ以降は全然迷いがないの。覚悟してるし確信犯だから、それは見ていたら気持ちいいわよ。
 ・・・
 ・・・「いい気なもんだよ、あの若者は」って思われていたんだけど、すごい憂うつな深刻な顔をして、すべてをぶっ壊してやりたいぐらいイヤだったって言うんです。・・・それでも、なんか自分の中に火が燃えているというのか、譲り渡すことのできない何かが燃えているという感じは持っているの。子供のときからずっと。でも、それがなんなのか、どうしたらいいのかが、若いからわからないの。非力だしね。
 それでずっと悩んでいたんだけど、あるときあまりに苦しくて苦しくてたまらなくなって、映画館の中に入っちゃったんですって。暗い中で座って、映画なんか全然見たくないんだけど、チラチラ光が明るくなったり暗くなったりしている中で、じっと自分の中を見ていたの。で、「ああ、そうだ。この中に燃えているものを今まで守ろうとしていた。それを消すこともできないし、渡すこともできないし、なんとかこうやって自分の力で守ろうとしていた。だから弱くなっちゃうんだ」と思ったんですって。それで、「いいんだ。そんなものは消しちまえ。これからは絶対に守らない」と決意をしたの。それであれかこれかという二つの道があったとき、絶対危険なほう、死んじゃうほうを選ぶって、そのとき決意したんですって。
 その数日後にクロソフスキーとカフェで話をしていて、「僕は決意したんだ。これから絶対マイナスのほうをとる。死んじゃうほうを選ぶんだ」と言ったら、「岡本もすごいことを言うね。でも、それは本当だ」とクロソフスキーは言ったそうです。それからは迷わないの。
 ・・・
 おもしろいのよ。いつでもあれかこれかというときは、マイナス、マイナス、マイナスってかけとおしていくんだ。かけるしかないんだ。でも、あるときふっと弱気になって、ちょっとこっちのほうが有利だというほうを一回選んじゃったら、今までのことが全部ガラガラと崩れるんだぞと言うの。

よしもと そうなんでしょうね。