全員違った状態のまま共存できる

ガチガチの世界をゆるめる

 あなたはあなたでいいんです、と体感できる場があるって、素晴らしいです。

 

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 ぼくたちは、新しい体操「ゆるササイズ」もつくっています。ゆるスポーツを始める前の準備体操で、身体と気持ちをほぐすためです。・・・ぼくが冒頭の体操を担当するときは「ざっくり体操」というものをやってもらいます。

 これは、ぼくが壇上からざっくりした指示を出して、参加者のみなさんがそれに従ってざっくり身体を動かすという体操です。

 モーツァルトがゆるやかに会場に響き始めたらスタートです。最初は、身体の部位から始めます。たとえば「はい、肩~」とだけぼくが言います。するとみなさん一瞬戸惑うのですが、勝手に指示を解釈して、それぞれ肩を動かしはじめます。・・・

 次に「足首~」「手首~」「腰~」みたいに、どんどんほぐす部位を変えながら、みんなバラバラに、思い思いに身体を動かしてもらう。途中で意味もなく笛を吹いてみたりもします。壇上にいる人の様子がおかしいって大事なんですね。「あの人ちゃんとしてないから、別にあの人に従順に従わなくていいんだ」となります。そのざっくりした、ゆるい空気がとてもいいんです。「尾てい骨~」とか言うとみんな笑っちゃうんですよ。「え、尾てい骨って何?(笑)」みたいな。

 これまでの体操はやっぱり硬いんです。みんな規律を守って、同じ動きをするのが体操だと思っている。だからこそ、ゆるスポーツの現場では、意表をついて体操もゆるいんです。・・・

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 こうやって、準備体操の段階からゆるスポーツのコンセプトを伝えます。この場ではみんなが同じルールを守ることや、そのルールの中で他人を蹴落とすことが大事なんじゃない。全員が違った状態のまま共存できる場なんだ、ということ。・・・違っていてもいい、むしろ違うからこそいいんだよね、ということが参加者に伝わっていくんです。そうすると、それだけで楽になるんですよ。あなたはあなたでいいんです、・・・ということが参加者に伝わるんです。

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 ゆるスポーツの現場にはいつも、ヒッピー・カルチャーのクリーンなところだけを抽出したような空気があります(笑)。綺麗事ではない、LOVE&PEACEな空気。それぞれが、らしさを存分に発揮している、個人平和(パーソナル・ピース)が実現された状態です。

 ぼくが生きている間には、きっと世界平和(ワールド・ピース)は実現できないでしょう。そこは半分諦めています。しかし、個人平和(パーソナル・ピース)と瞬間平和(インスタント・ピース)だったら、実現できるかもしれない、と考えています。・・・

ビッグマウス、スモールアクション」という標語をぼくは掲げているのですが、・・・「あらゆる世界をゆるめるんだ」というのはビッグマウス。対になるスモールアクションとして、目の前の小さな世界をゆるめる具体的なスポーツやイベントを多産して、コツコツと発表しています。結果、個人平和や瞬間平和が、そのスポーツなどをしている5分とか10分だけ生まれる。でも、その平和が集積していった先に、これまでの生きづらい世界にヒビが入り、一気に時代の流れが変わるときが来ると思っています。