お礼の手紙

社員第一、顧客第二主義―サウスウエスト航空の奇跡

 こんな心遣いを実践できるなんて、素晴らしいです。

 

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 次に紹介するのはサウスウエスト航空の社員たちが、困難な状況にある人たちへ援助の手を差し伸べたり、激励したりした彼らの、心優しい心根へのお礼の手紙だ。

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<父が心臓発作で倒れたため、私は至急ヒューストンの家族のもとへ駆けつけねばなりませんでした。とはいうものの、そう急に言われても、私には旅費を工面する余裕はありませんでしたが、ともかく予約だけは入れ、あとはだれかにお金を借りることにしようと思いました。ところが、私が十分な金額を工面することができないことを知り、かつ私の父の心臓発作の件を聞いたサウスウエスト航空の予約係の中のふたりが、自分たちのお金を出しあって、私のために航空券を購入してくれたのです。―アリシア・ラモン>

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<私が乗った便に大変ご高齢な女性が乗っていましたが、その方は何をするにも人の助けを要するほど弱々しい人でした。そんな彼女を、彼女の家族はひとりぼっちで飛行機に乗せたのです。フェニックス基地に属する客室乗務員のチェリー、ローラそれにドナの3名はフライトの間中、絶え間なく彼女のお世話をしていました。

 3名のうちのひとりは、彼女が恐怖心に襲われた時には優しく抱きしめてあげていました。その女性が飛行機に対する恐怖心のため、座席に座っておれず何度も席を立とうとするたびに、3名はかわるがわる彼女の面倒を見てやっていました。その女性がお手洗いに行くたびに、3名のうちのだれかが必ず彼女の手をとって誘導し、そしてまた座席まで連れて戻ってきていました。

 3名の乗務員たちは、その女性に対して、決して恩着せがましい態度をとったり、逆に腹立たしく思っているような様子も見せませんでした。これらの様子の一部始終を目にしていた、ほぼ全員の乗客は彼女たち3名の献身的な態度に強く心を打たれ、その中の多くの人が、フライトの後半には感激のあまり、目に涙を浮かべたり、涙を流したりしていました。今は、私は必ずサウスウエスト航空を利用することにしています。

 ・・・私は御社の社員たちのサービスの基本には、人に対する〝愛〟があるということを信じて疑いません。―エンリン・マリー・E・ファタル>

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<私たち「ホスピス・ケア・センター」は先日、デイトン市に住むマリリン・ウィック夫人よりお手紙をちょうだいいたしましたが、内容は、間もなく死を迎える彼女たちの娘、リーをデイトンに連れ戻すフライトに関することでした。・・・移動するためには、飛行機の便に特別の配慮をお願いしなくてはならなくなりました。私どもがUSエアに電話を入れてお願いをしたところ、彼らはまったく協力的でないばかりか、こちらの状況を理解しようとさえもしてくれませんでした。

 リーの家族が手詰まり状態になっていたとき、ウィック夫人が、サウスウエスト航空なら、きっと喜んで力を貸してくれ、飛行中も必要な手だてを打ってくれるに相違いないと思いついたのです。家族はヒューストンに出かけていき、サウスウエストの社員に会い、その結果、彼らからいろいろな援助をしてもらえることで話がまとまったそうです。

 ウィック夫人は次のように記しています。

〝私たちが搭乗したあと、ダラス基地の客室乗務員のサンドラ・ボーガン、パティ・ウォーカー、それにフラン・チャンスを紹介されました。彼らはリーが横になれるようにと、前方にある特別席を用意してくれました。3名とも実に親切にしてくれました。私が涙を流しているのに気づいたそのうちのひとりがそっと近寄ってきてくれ、私を元気づけてくれました。私は今まで、こんな心遣いを受けた覚えがありません。・・・〟

 リーの死後も、サウスウエスト航空の社員たちから、家族に対してお悔やみや励ましのカードや手紙が寄せられております。

 ウィック夫人は今回の彼女の体験を次のように要約して述べています。

〝娘の死により私の人生は大変哀しいものになりましたが、逆に、世の中には、こんな私を元気づけてくれたり、生きる勇気を与えてくれるような素晴らしい人々がいるということを知ることができて、心が豊かになることができました。・・・私は、どんなに悪い状況にあっても、必ずよくなると信じることによって、すべての消極的な事柄が積極的なものに変わっていくのだということを信じられるようになったのです。―ラリ・キナー>

 これらの手紙を読んでいて感じられるのは、サウスウエスト航空の経営哲学のひとつである〝それは私の仕事ではないという言葉はわが社にはない〟ということと〝やらなければならないからやるのではなく、自分がやりたいからやるのだ〟というのが、社員ひとりひとりに浸透しているということである。・・・